「アメリカの時計」観劇

「アメリカの時計」 作:アーサー・ミラー翻訳:高田曜子演出:長塚圭史 美術・映像:上田大樹照明:横原由祐音響:池田野歩衣裳:阿部朱美ヘアメイク:赤松絵利演出助手:鈴木章友舞台監督:足立充章 制作:田辺千絵美、西原栄プロデューサー:笛木園子チーフプロデューサー:笛木園子、伊藤文一事業部長:堀内真人芸術監督:長塚圭史主催・企画制作:KAAT神奈川芸術劇場助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会    左に行けばホール公演「ブラッククローバー」、右に行けばスタジオ公演「アメリカの時計」。振り幅が広いKAAT(ま、私も両方観るヒトですが。) 1980年に書かれたアーサー・ミラーの戯曲。1929年のあの大恐慌がアメリカの普通の家族に与えた影響を細かく描いている。演出の長塚圭史は、スタジオに砂を敷きつめ、そこで恐慌で進学を諦め、人生が変わってしまったリー(矢崎広)に自転車を走らせたりしている。また、リーおよび彼と一緒にMCを担当するアーサー・ロバートソン(河内大和)、そしてリーの父母(中村まこと・シルビア・グラブ)のほかは、全員が複数の役を演じ、少ない人数で多様な物語を描き切る力作だった。その分、少し分かりづらい(この人、誰だっけ?)みたいな部分もあったが、それは、もしかしたら、些末なことなのかもしれない。リーの一家の物語というよりは、あの当時のアメリカ人の物語という部分を強調したかったのかな アメリカという国全体が歴史上危機に見舞われたのは、二…

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「我ら宇宙の塵」観劇

EPOCH MAN「我ら宇宙の塵」 作・演出・美術:小沢道成映像:新保瑛加音楽:オレノグラフィティステージング:下司尚実舞台監督:藤田有紀彦照明:奥田賢太音響:鏑木知宏パペット製作:清水克晋衣裳:西川千明ヘアメイク:Kazuki Fujiwara演出助手:相田剛志舞台監督助手:磯田浩一 すごく面白い演劇を観た。事故で亡くなった少年のお父さん。お父さんは、どこへ行ってしまったんだろう少年は、どんなことも深く知りたがる性格で、母親(池谷のぶえ)はそれで困ってしまうことも多かったが、亡くなった父親が、少年に宇宙のことを教える。少年は夢中になって宇宙について学び、父と話し、日々を過ごした。その父親を失った少年は、母親とはほとんど言葉を話さず、ひたすら絵を描いていた。ある日、少年が姿を消しー 少年が姿を消したところから物語は始まる。母親は、出会った人々に息子を見ませんでしたか?と聞くが、鷲見昇彦(渡邊りょう)と早乙女真珠(異儀田夏葉)は、なぜか一緒に探すと言い出し、まるで桃太郎と犬猿雉のように、一人ずつ仲間が増えていく可笑しみがある。三人は、プラネタリウムに到着し、そこに少年(パペット)が来ていることがわかり一安心するのだが、鷲見(ペットロス)や早乙女(亡き母の呪縛)の問題や、「人が死んだらどうなるのか」という大人も本当のところは知らない命題を子供にどう説明するのか、という大命題が登場し、なかなかに哲学的。舞台の背景に登場する映像はとても印象的(線画アニメみたい?)だし、パペットを作・演出の俳優、小沢…

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朗読劇「四つの署名」

リーディングシアター「四つの署名」 原作:アーサー・コナン・ドイル脚本・演出:毛利亘宏(少年社中)音楽:YODA Kenichi 舞台監督:西川也寸志演出部:伊藤ほのか舞台美術:秋山光洋(n10design)美術助手:秋山えり(n10design)大道具製作:俳優座劇場生花装飾:毛利華世照明:齋藤真一郎音響:井上尚裕(atSound)衣装:村瀬夏夜衣装進行:秋山友海ヘアメイク:遠田ひとみ演出助手:廿浦裕介美術協力:n10design小道具協力:高津装飾美術ヘアメイク協力:LaRME、株式会社エノン照明機材協力:ART CORE運搬:マイド制作:一ツ橋美和(シャチュウワークス)、宮本綾子(シャチュウワークス)プロデューサー:井手響太(文化放送)、中村恒太(東映)アシスタント・プロデューサー:高橋悠太(文化放送)、川崎紗也子(東映)制作協力:シャチュウワークス主催:東映、文化放送 8月4日夜公演観劇ホームズ:矢崎広ワトソン:仲村宗悟 様々な俳優が、ホームズ・ワトソンに扮して行われる朗読劇、以前「緋色の研究」を見て、矢崎広のホームズやワトソンにすっかり魅了されたので、今回も矢崎の公演を目指して観に行った。とはいえ、このシリーズ、毎回、私好みの俳優が入れ代わり立ち代わり出演するので、全部観たいと、毎回、歯噛みしてしまう。今回は、有澤樟太郎・細谷佳正・赤澤遼太郎・矢崎広・長妻怜央(7ORDER)・仲村宗悟・濱健人・岡本信彦・鈴村健一・島﨑信長というメンバーが、ホームズとワトソンに扮した。出演陣に声優…

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「或る俳優の物語~三木のり平編~」第二部観劇

『60‐60の会・見聞芝居』「或る俳優の物語~三木のり平編~」第二部 立志編 構成・演出:倉本徹演者:藤原啓児聞き手:倉本徹 「見聞芝居」というのは、「徹子の部屋」のようなインタビュー形式での、一人語り演劇という新しいスタイルの芝居ってことだろうか。演者の藤原は、三木のり平という人物として語って(演じて)いくが、聞き手の倉本は、演じる必要はなく、藤原が三木のり平になるための媒介のような存在に感じた。一日で、第一部・第二部の通し上演をして、以上終了…という大変潔い公演だったため、残念ながら、第二部だけの観劇となってしまったが、それでも大変面白い見聞となった。 まず、倉本の前説がいい。浅草にロック座という劇場が昔あったというのは知っていたが、そのロックをこの日まで、私は、Rockだと思っていた。「六区」だったのかこの見聞に登場する過去の様々な文化を手際よく、時に脱線しながら楽しく紹介していく。浅草という街の特殊性と、そこで生まれたエンタメの生き証人・三木のり平という構図がとても鮮やかで、最高の時間だった。さて、本編。私は世代的に、桃屋のCMで育っている層なので、三木のり平の、あのしゃべりが脳に焼きついている。その分、藤原の演じるのり平さんには、冒頭、少し違和感があったが、のり平の波乱万丈の人生に夢中になるうち、だんだん違和感が抜け、藤原ののり平が心地よく感じられるようになってきた。「セリフを覚えずに、あちこちにカンペを仕込んでいた」という噂を否定する場面など、論理的な口調で、なるほどと思わせたし…

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「明けない夜明け」(再演)観劇

演劇企画集団ジュニアファイブVol.15「明けない夜明け」 作・演出:小野健太郎演出助手:鷲見友希、赤松真治舞台監督:倉本徹大道具:倉本工房舞台美術:寺田万里奈照明プラン:横原由祐照明オペレーション:國吉博文音響プラン:島猛音響オペレーション:芹澤悠方言指導:山下タクロウ企画・製作:演劇企画集団Jr.5 母が父を殺したー三姉妹は、その時から、加害者家族で被害者家族になった。 初演は2019年。モデルになる事件(久留米看護師連続保険金殺人事件)があり、そのうちの一つの家庭の「その後」を描きながらも、わざと設定を変えている部分があった。特異な事件であるため、テーマが分離しそうになるのを防ぐ必要があったのだろう。で、昨年、事件そのものを描いた「白が染まる」を上演したことで、再演となる今回は、「白が染まる」の続きであることを示唆したセリフなどが追加されている。とはいえ、この一家の名前は、「河内さん」のまま。そこだけは、拘りだから変えられないんだろうな、と思った。(Jr.5の公演は、必ず主役級の人物に「河内」姓が使われるのです。)「白が染まる」のヒロイン、イシイヒトミの子供たちが「河内」を名乗っていても、犯罪者家族であることを隠すために、姓を変えている可能性はあるし、そこは気にしないことにした。 三人姉妹の名前は、上からアイ(誠子<尼神インター>)、メグミ(小島藤子)、マナ(吉本実憂)。すべて、「愛」の読みだ。子供たちに「愛」の読みを持つ名前を付けた両親が、こんな末路を迎えるなんて。(どうやら、パン…

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悪童会議「いとしの儚」観劇

悪童会議旗揚げ公演 100DAYs LOVE「いとしの儚」 作:横内謙介演出:茅野イサム 音楽:和田俊輔作詞:浅井さやか(One on One)振付:桜木涼介殺陣:清水大輔(和太刀) 美術:石原敬(BLANk R&D)美術助手:湖崎茜香(BLANk R&D)照明:林順之(ASG)音響:青木タクヘイ(ステージオフィス)衣裳:小原敏博衣裳助手:小林由香衣裳製作:大和田梓特殊小道具:田中正史(アトリエ・カオス)衣裳進行:懸樋抄織、石井玲歌ヘアメイク:糸川智文(STRINGS)ヘアメイク助手:杉野未香歌唱指導:カサノボー晃所作指導:花柳輔蔵所作指導アシスト:花柳輔貴理子音楽制作協力:新良エツ子 演出補佐:加古臨王演出助手:山崎絵里佳舞台監督:大山慎一 特効:アトリエ・カオス大道具:株式会社俳優座劇場小道具:高津装飾美術株式会社 制作:高橋戦車(オフィス鹿)、野田麻衣(MIMOZA)、鳥谷規制作助手:及川晴日、佐藤恵美(MIMOZA)、村上希、瀧口さくら、高崎悠珂プロデューサー:中山晴喜主催:アミューズキャピタルインベストメント、悪童会議、ニッポン放送 六本木のトリコロールシアターで上演された「いとしの儚」を観劇したのは、もう2年前(調べたら2021年10月でした)その公演を観に来た今回の演出家茅野イサム氏が、その時一緒に観劇していた佐藤流司を主役に今回の公演を企画したと聞き、それなら今回の「いとしの儚」も観に行かなくては…と思った。「ミュージカル刀剣乱舞」の沖田組(沖田総司が…

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「ジョン王」観劇

彩の国シェイクスピア・シリーズ「ジョン王」 上演台本・演出・彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督:吉田鋼太郎 作:W・シェイクスピア翻訳:松岡和子 美術:秋山光洋照明:原田保音響:角張正雄衣裳:宮本宣子ヘアメイク:大和田一美擬闘:栗原直樹音楽:サミエル演出助手:井上尊晶、菅野将機舞台監督:倉科史典技術監督:小林清隆 振付(「月の祭り」):中村京蔵 彩の国シェイクスピア・シリーズはシェイクスピア作品全37作上演を目指したシリーズで、本作は、その36作目に当たる。コロナ禍で一度上演中止となり、その後、第37作「終わりよけれすべてよし」が上演終了してしまったので、実質、最後の上演作となる。で、私にとっては、これがシリーズの初観劇だったりする。(笑)もちろん、このシリーズのいくつかの作品はWOWOWなどで観ていたり、そもそもシェイクスピア劇は、他の舞台でたくさん観てはいるのだけど。 シアターコクーンの搬入口は、舞台の真後ろにあって、東急百貨店の駐車場に繋がっている。そこは、業務用車両専用ではなく、一般車両も駐車できる場所らしく、演出でここを開放していると、たまに向こう側を一般客が歩いていたりする。この公演も、開演前から舞台奥の搬入口を開放している。こういう演出、蜷川(幸雄)さんがよくやっていたな~などと、思い出すうち開演時間になり、駐車場側から、一人の若者が劇場に入ってくる。パーカーのフードを被りマスクをしたラッパーのような風情の男性ー小栗旬だった。彼は、ストレンジャーとして、この作品世界に…

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「明治座でどうな・る家康」観劇

笑う門には福来・る祭「明治座でどうな・る家康」 構成・演出:板垣恭一脚本:村上大樹 音楽:かみむら周平、関向弥生   楠瀬拓哉(挿入歌9曲)美術:原まさみ衣裳:三澤裕史音響効果:天野高志(RESON)音響:田中嘉人(RESON)ヘアメイク:田中エミ殺陣:渥美博映像:手代木梓振付:EBATO振付助手:村上知央、草野未歩歌唱指導:染谷妃波演出助手:小林賢祐舞台監督:中西隆雄 企画・製作:る・ひまわり、明治座 年末年始のお約束、る・ひまわりの公演を年末に観劇した。毎年、絶対観る…というわけではないが、ここ2年は、続けて観ている。やはり、翌年の大河ドラマを先取りしたテーマの時は、行く気になりやすいようだ。というわけで、今回は、「どうする家康」ではなく、「どうな・る家康」です。 天寿を全うしたとはいえ、鯛の天ぷらにあたって死んだ徳川家康(平野良)は、三途の川を渡る前に、これまでの人生を振り返ることになる。75年の長く、波乱に満ちた人生をー作品テーマは「それでも生きていく」今回の「る祭」、アンサンブル俳優が一人も出演していない。なので、村人とか兵士とかは、「空いている」俳優が兼務することになる。しかも、ワンポイントなので衣裳を替えるのも大変。…ということで、ワンポイント出演の時は、ジャージのうえになにかをちょっと羽織った感じで出るので、「そういうものだと思ってほしい」という注釈が入る。名づけて「ジャージ・ボーイズ」をいをい…しかも、恐ろしいことに、メンバーには、大山真志まで含まれているのだ(すみませ…

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プロペラ犬「僕だけが正常な世界」観劇

プロペラ犬第8回公演「僕だけが正常な世界」 作・演出:水野美紀(プロペラ犬) 美術:照井旅詩照明:齋藤真一郎照明操作:栗橋佳菜子音響:佐藤こうじ(Sugar Sound)音響操作:日本有香(Sugar Sound)マイクケア:増田郁子(株式会社スタッフステーション)映像:上田大樹、新保瑛加、石原澄礼映像操作:玉木将人衣裳:小野涼子小道具・造形:湯田商店ヘアメイク:大貫茉央、今家真美音楽:伊真吾(OVERCOME MUSIC)振付:入手杏奈演出助手:雪原千歳(モンコックハウス)、猪俣利成、西野優希舞台監督:筒井昭善演出部:竹内万奈、織田圭祐、みぞぐちあすみスタイリスト:YOSHIKIアシスタントプロデューサー:水野彰弘、田代麻依プロデューサー:宮下貴浩(株式会社ルビーパレード)共同プロデューサー:中道正彦企画・プロデュース:水野美紀 文化庁「ARTS for the future2」補助対象事業 スペシャルサンクス:小林利那(振付協力)          小口隼也(追加キャスト) 主催:プロペラ犬 「僕だけが正常な世界」が上演されている劇場は、東京芸術劇場シアターウエスト。演劇ファンには、おなじみの、東京芸術劇場ビル地下にある、シアターイーストと隣り合わせの劇場だ。…ということを、まず、前提条件として提示しておく。冒頭、ウォーミングアップのかっこうで現れた、俳優と思しき青年(鳥越裕貴)は、いきなり始まってしまった舞台に巻き込まれていく。どうやら舞台は「青い鳥」らしい。登場人物は、チルチル…

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キャラメルボックス「クロノス」観劇

演劇集団キャラメルボックス 2022クリスマスツアー「クロノス」 原作:梶尾真治(「クロノス・ジョウンターの伝説」徳間書店刊)脚本・演出:成井豊 演出補:白坂恵都子美術:キヤマ晃二+稲田美智子照明:勝本英志(Lighting Lab)音響:早川毅(ステージオフィス)振付:川崎悦子衣裳:黒羽あや子ヘアメイク:山本成栄舞台監督:矢島健 音楽:鈴木理一郎、竹中三佳、OCEANLANE、advantage Lucy、優河、PLECTRUM、GOOD BYE APRIL音楽コーディネーター:高岡厚詞プロデューサー:仲村和生主催:『クロノス』製作委員会 この公演、毎日前説(アナウンス)が変わるようだが、(出演していない劇団員が持ち回り)私が観劇した日は、坂口理恵さんの前説だった。出演していない劇団員のお元気な様子を聞くことができるのは、とても嬉しい。 さて、キャラメルボックスは、梶尾さんの原作となる「クロノス・ジョウンター」シリーズを原作とする作品を、7作品ほどレパートリーに持っている。原作が短いせいか、短編2作を同時上演したりもしている。(そのうち、2作は、設定を利用した成井豊オリジナル作品。)私も、「ミス・ダンデライオン」という作品を観ている。クロノス・ジョウンターという、物質を過去へ飛ばす装置が、開発された。開発というか、半ば偶然の産物として。これを使えば、人間も過去に行って、人生をやり直せるとばかり、一時は研究が活発に行われたが、だんだん装置の欠点が明らかになって、開発は中止になる。過去へ飛…

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