「腑に落とす。」観劇

「腑に落とす。」 作・演出:根本宗子 音楽:清竜人 BOY:若林佑真 衣裳:藤林さくら 舞台監督:成田里奈 舞台美術製作:竹井祐樹 音響:藤森直樹 照明:中佐真梨香(空間企画) 照明オペレーター:山内裕太 当日受付:佐藤美紘 ヘアメイクプラン:小夏 舞台写真:Masayo 制作:月刊「根本宗子」 <出演>根本宗子、小日向星一 劇作家に専念している根本宗子が久々に女優復帰というので、行ってまいりました。小日向星一との二人芝居というのも面白そう…と思って。 結婚相談所に通う男女。紹介された相手が、まさかの元恋人結婚相談所でのやり取り(一方的に責められる)では、相談所のスタッフ役も演じ分け、二人とも出ずっぱりしゃべりっぱなし。個性強めな男女がどうにか結びつくまでの物語が、過去の交際話も交えて怒濤の展開で語られる。ディズニーランドにおにぎりを持って行った話が何度もトラウマとして語られるのだが、最後まで持ち込み禁止に触れない辺りの価値観が秀逸。(たぶん根本さん、ディズニーとか詳しくないですよね) ずっと笑いっぱなしの楽しい時間でした。小日向くん…ちょっと髪の毛がさびしくなってないですか?大切にしてくださいね…遺伝とかあるかもだし。

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「九十九想太の生活」観劇

「九十九想太の生活」 脚本・演出:澁谷光平 音楽:まるやまたつや舞台監督:本郷剛史舞台美術:SPM照明:仲光和樹音響:小林遥 <キャスト>九十九想太…前川優希九十九悠也…里中将道四宮晃司…日南田顕久四宮さおり…木村はるか五木美代…あきやまかおる五木治…浦尾岳大七瀬…山木透八村…NARUYA一ノ関…苗村大祐二階堂…藤波瞬平三条…釜山甲太郎 久々のスプリングマンの公演。家族の日常を丁寧に描いていく「弁当屋の四兄弟」などのシリーズに、元スタジオライフの藤波瞬平が出演していて、その流れで観るようになった。今回も、登場人物は違うが、同じ町内の物語のようだ。(舞台は世田谷区の昔ながらの町の一角)また、藤波のほか、日南田顕久、あきやまかおるもシリーズ常連で、彼らが出てくると、あの世田谷の街角の物語なんだなぁ~と勝手に脳が考えてくれるほどに、シリーズに馴染んできた感がある。劇場は、今回、シアターアルファ東京という初めての劇場。恵比寿にできた新しい劇場なのだが、お茶の間を設営するには、ちょっと問題のある劇場だった。というのは、サイド前方の席に死角が多く、舞台をフルで使ったり、お茶の間に俳優が座ったりすると、まあ見えない。客席数200というコンパクトさは買うが、演目は選びそうだな…という感想を持った。吉祥寺シアター(前回公演)のような勾配の大きな劇場の方が、この手の公演には合うように思う。(場面転換のない芝居だが、正面に茶の間がどーんとあって、奥が庭先(干しっぱなしの洗濯物がある&訪問者は庭から入って来る)、…

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「メイジ・ザ・キャッツアイ」観劇

舞台「メイジ・ザ・キャッツイ」 原作:北条司「CAT’S EYE」脚本:岩崎う大(かもめんたる)演出・共同脚本:河原雅彦 <キャスト>来生瞳…藤原紀香来生泪…高島礼子来生愛…剛力彩芽内海俊夫…染谷俊之平野猛…上山竜治藤堂…美弥るりか栞…新谷姫加神谷真人…川久保拓司ミケール・ハインツ…長谷川初範 キワモノかなと思いながら観に行った「メイジ・ザ・キャッツアイ」だったが、面白かった。明治座で上演されるから、明治時代ではどうか、という提案が北条先生からのものだった!という衝撃(企画は江戸時代ものだったらしい)もありつつ、明治時代で本当によかったなと思う。しっかりテーマ曲が披露されるシーンもあり、レオタードは時代的に無理…とはいえ、極力寄せて、さらに出演者の魅力が引き立つ衣装になっていて、素晴らしかった。 美弥演じる藤堂、もちろんかっこよくて大満足なのだが、実は栞の母だったという設定には、納得が…男装ってそんなに簡単にできるもんじゃないのよ背が高くて美人でクールな高島礼子おねえさまだって、男装シーン(夢)は、痛々しかった。鬘もしょぼかったし。染谷・上山・川久保の男性メンバーのやり取りが面白く、作品を盛り上げていたと思う。キャストの年齢差の緩衝材としても、染谷はいい仕事をしていたし、なにより、俊夫の可愛さが似合いだった。上山は、ややオーバーリアクションな芝居が役柄に合っていて、こういう芝居もやるんだな~と驚いた。2.5次元舞台にも出てくれないかしら⇒2.5系スタッフさんと、かなりお仕事されているし…

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「笑わせんな」観劇

「笑わせんな」 脚本:福谷圭祐演出:オクイシュージ 音楽:遠藤浩二美術:仁平祐也照明:高野由美絵音響:藤本純子衣裳:高田菜々子ヘアメイク:武井優子演出助手:山田翠舞台監督:宇佐美雅人 <出演>藤原宙介…浜中文一比嘉有希…山下リオ山田遊太…鳥越裕貴郷田宏…松島庄汰鯉川愁平…岐洲匠田中みゆ…佐藤日向三池史帆…松原由希子香坂麻尋…福井夏佐藤真由…辻本耕志吉岡美…久ヶ沢徹松本正義…入江雅人 本多劇場で「笑わせんな」を観劇した。 面白いだけでなく、考えさせられるところもあり、充実した演劇空間だった。やっぱ、鳥越裕貴が、出る舞台は、ハズレがない。 美容室の地下行われている秘密の会合。参加者は、くすぐりたい「ぐり」と、くすぐられたい「ぐら」に分かれ、基本、ペアで参戦する。※初参加者には「ぐりですか?ぐらですか?」という質問がなされる。これはもちろん、ロングセラーの絵本「ぐりとぐら」を意識している。彼らは、スタート前にくすぐりをストップするための合言葉を設定する。というのは、「やめて」「やだ」という言葉は、くすぐられている間、ついつい口をついて出てしまうので、本当に「ぐら」がこれ以上はイヤだと思った時に、終了宣言として口に出す言葉が必要なのだ。※実は主人公たちペアの終了ワードが「笑わせんな」だったということが途中でわかり…タイトルまで、くすぐりが効いているのだった。 オーナーに内緒で美容院の地下室を秘密会合に使っている主人公もひどいが、その他の登場人物たちも、めちゃくちゃ。誰一人、まともな人がいない…

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「かわりのない」観劇

「かわりのない」 作・演出:タカイアキフミ美術・衣裳:山本貴愛音楽:高位妃楊子音響:谷井貞仁照明:加藤直子舞台監督:谷澤拓巳演出助手:菅原紗貴子ステージング:浅野康之制作補佐:茉瑶制作:笠原希主催:合同会社TAAC <出演>春日井陽平(警察官)…荒井敦史田代由希子(難病の息子を亡くした母)…異儀田夏葉田代建太(由希子の夫)…清水優根本岳(田代家の近所に住む事故死した大河の父)…納谷健春日井里実(陽平の妻)…北村まりこ橋爪史朗(内科医)…廣川三憲 シアタートップスで上演されていた「かわりのない」を観劇しました。 この芝居は、以前同じ作・演出家によって上演された舞台のリブート作品とのこと。上演後、前作に出演していた「悪い芝居」の山崎彬さんが登壇して演出家とのアフトクが行われ、さらに興味が増した。 そもそもは、拡張型心筋症の子供をアメリカで治療するために3億円を集めていた夫婦(本作の田代夫妻)だけの物語だった。あと20万弱で目標額に到達するというところで息子が急死、夫婦の関係性までおかしくなってしまう。夫は、妻との関係を修復しようと、募金を再開することを提案、いけないことだと知りながら、夫婦は、もう居ない息子のために募金活動を再開し、それが生きがいになっていく。 今回の舞台は、その夫婦のところに、シングルファーザーからネグレクトされている少年が訪ねてくるところから始まる「新たな物語」が追加されている。熱を出した少年を医者に連れて行った夫婦。自分たちの子ではないから保険証はない。しかし、3億円…

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「ある閉ざされた雪の山荘で」観劇

舞台「ある閉ざされた雪の山荘で」 原作:東野圭吾構成・演出:野坂実脚本:米山和仁 脚本協力:小原ゆか美術:仁平祐也照明:阿部将之(LICHT・ER)音響:竹下好幸、島村幸宏衣裳:清水喜代美ヘアメイク:黒田はるなアクション指導:藤田けん演出助手:高島大輝舞台監督:住知三郎 主催:ハピネット・メディアマーケティング、ノサカラボ <出演>久我和幸…室龍太中西貴子…大野いと田所義雄…加藤良輔元村由梨江…本西彩希帆麻倉雅美…入来茉里笠原温子…綾凰華雨宮京介…小南光司本多雄一…今江大地 東郷陳平…山寺宏一(声の出演) 映画と舞台が同時に上映/上演されるということで、両方見た人キャンペーンというのをやっているのを知り、直前に映画も鑑賞し、内容を頭に入れた上で観劇。この時点で、あやなちゃんが一番最初に消える人物ということがわかっていたので、ちょっと気分は下降気味。でも、本作、ほぼ原作通りの内容にもかかわらず、唯一と言っていい原作にない設定が、探偵役の久我が、第一の被害者を脳内でパートナーにして推理していくタイプの探偵だったこと。あやなちゃんの登場シーン、大幅アップ 犯人は俳優たちの誰か、という設定は、つまり、彼らの証言が演技かもしれないわけで、見ている方は楽しいが、演じている方は、役を演じるだけでなく、嘘の部分をそこに上乗せして演じなければならないので、演技プランがより大変になる。多重構造(演劇のオーディションという空間を利用した殺人劇と見せかけて…みたいな)になっているので、観客に理解させるのも大…

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「シラの恋人」観劇

シス・カンパニー公演「シラの恋文」 作:北村想演出:寺十吾 美術:松井るみ照明:服部基衣装:前田文子音楽:坂本弘道映像:ムーチョ村松音響:岩野直人ヘアメイク:宮内宏明ステージング:小野寺修二舞台監督:芳谷研プロデューサー:北村明子 剣術指導:楠見彰太郎(座☆風流堂)、田村令 <出演>草彅剛、大原櫻子、工藤阿須加、鈴木浩介、西尾まり、明星真由美、中井千聖、宮下雄也、田山涼成、段田安則 「シラノ・ド・ベルジュラック」の翻案だと思って観に行ったら、「シラノ…」に「着想を得た」オリジナル戯曲だった。物語は、近未来の日本を舞台にしている。たぶん、十年ほど先の。コロナ禍などを経て、既存の抗生剤の効かない結核が「新たな死病」となった日本。各地に、患者を受け入れて療養させ、最期は看取るためのサナトリウムが出来た。鐘谷志羅(草彅剛)は、患者としてここを訪れる。山と海が見える美しい場所にあるサナトリウム。そこには、クセのある院長(段田安則)や、色々抱えていそうな看護師(西尾まり)がいて、個性的な患者もたくさん療養している。そんな中に、まだ若い女性の入院患者・野浦小夜(大原櫻子)がいる。志羅は、小夜の姿に、子供の頃好きだったテレビ番組の中の少女剣士の姿を見ていた。(志羅が小学校に上がったくらいの頃に10代の若手女優だったその役の女性は、20歳前に交通事故で亡くなっていた。) サナトリウムの学芸会(?)みたいなシーンが長々あって、その辺りで集中力が切れてしまった残念な私…「シラノ・ド・ベルジュラック」が脳内に…

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少年社中「テンペスト」

少年社中25周年記念ファイナル 第42回公演「テンペスト」 原作:ウィリアム・シェイクスピア脚色・演出:毛利亘宏 照明:斎藤真一郎音楽:YODA Kenichi衣裳:村瀬夏夜舞台美術:秋山光洋(n10design)舞台監督:横尾友広音響:井上直裕(atSound)振付:本山新之助アクション指導:栗田政明(倉田プロモーション)映像:森すみれヘアメイク:林美由紀演出助手:本藤起久子 原作者・シェイクスピアは、劇団の座付作家だった。新作の公演は、おそらく、上演時の劇団員に当てて配役されている。不自然に劇中で登場しなくなるキャラクターは、初演当時一人二役で配役されていたのではと言われているし、後年、演技経験の浅い少年が演じているはずのヒロイン役が複雑なキャラクターになったり、独白したり、エピローグを担ったりするのは、天才俳優が現れたか、大人になってもヒロインを演じられるような、日本で言うところの女形役者が育ったのか、それともこっそり禁断の女優が登場したか、研究者でなくても想像は止まらない。 シェイクスピア劇には、主人公やその相手役のようなメイン配役だけでなく、トリックスター、道化、脇筋の主役など、様々な役が配置され、劇団員のあっちにもこっちにも配慮しているな〜と感じることが多い。まさに、本作の作・演出の毛利さん他の舞台では普通にダントツで主演している鈴木拡樹、矢崎広、鈴木勝吾の三枚を煌びやかに揃えて、劇団員の井俣太良主演の一作を作ってしまうのだから。 私が観た回は、そんな毛利さんが、日替わり配役の亡…

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明治座「西遊記」

日本テレビ開局七十年記念舞台「西遊記」 脚本:マキノノゾミ 演出:堤 幸彦 音楽:植田能平 美術:松井るみ 照明:高見和義 音響:山本浩一衣裳:宮本宣子 ヘアメイク:川端富生 映像:髙橋洋人 ステージング:広崎うらん アクション:諸鍛冶裕太 演出助手:松森望宏 舞台監督:小川 亘 制作統括・プロデューサー:松村英幹 出演孫悟空…片岡愛之助三蔵法師…小池徹平猪八戒…戸次重幸沙悟浄…加藤和樹玉竜…村井良大紅孩児…藤岡真威人鎮元子…田村心玉帝・高伯欽…曽田陵介虎力大仙…小宮璃央高翠蘭…柳美稀鹿力大仙…押田岳羊力大仙…桜庭大翔銀角…山口馬木也金角…藤本隆宏鉄扇公主…中山美穂牛魔王…松平健 釈迦如来…藤原紀香(映像出演)ナレーション…神田伯山 さすが、日本テレビ70年記念舞台だけあって、出演者が豪華昨年、字は違うけど(by田村心)「最遊記」の外伝を観劇したので、天上の物語から始まったのも、胸アツ。猪八戒が天蓬元帥、沙悟浄が捲簾大将として登場するシーンもあって、それがあることで、ブタやカッパに見えないイケメンの彼ら…というのが、納得できちゃうシステムというのはあるものの、私は勝手に「最遊記外伝」を思い出して、盛り上がっていた。とにかく豪華キャストな上に、さらにお釈迦様=藤原紀香の巨大映像が登場。お釈迦様のてのひらの上で踊らされている孫悟空=片岡愛之助という設定が普通に笑えるのは、たぶん紀香様が本当は愛之助さんに献身的に尽くしているというのが伝わっているせいもあるんだろうと思う。 豪華キャストはさ…

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「演劇ドラフトグランプリ」

「演劇ドラフトグランプリ2023」 企画・プロデュース:荒牧慶彦総合演出:植木豪 演劇ドラフト会議MC:赤平大 構成:堀裕介音楽:田中マッシュ、HILOMU映像演出:佐々木章介照明:大波多秀起音響:山口剛史映像操作:荒川ヒロキ衣裳:伊藤祥子ヘアメイク:瀬戸口清香演出助手:杉山恵舞台監督:堀吉行、久保健一郎 総合司会:山寺宏一ナビゲーター:鈴木拡樹楽屋レポーター:高木俊アシスタントレポーター:田中涼星特別審査員&国歌独唱:中川晃教審査員:中野博之(週刊少年ジャンプ編集長)、川窪慎太郎(週刊少年マガジン編集長)、大嶋一範(週刊少年サンデー編集長)、松山英生(週刊少年チャンピオン編集長)、熊井玲(ステージナタリー編集長) 昨年から開催されている「演劇ドラフトグランプリ」、今年はお誘いいただいて、武道館に行ってきました「演劇ドラフト」じたいは、コロナ禍の頃、2.5次元俳優の間で【おあそび】レベルでやっていたのを見たことがあるので、アイデアは目新しいものではない。この企画のすごいところは、忙しい2.5次元界の俳優たちに、12月5日の本番を頂点とする何日かの稽古期間と本番をあけさせて、ドラフトに臨むというところだ。引き受ける方は、このドラフトグランプリが、やがては紅白レベルの国民的行事になってくれないと、割に合わない。なぜなら、ドラフト時点では、作品も役柄もまったくわかっていない状態だからだ。そんなオファーってなかなかない。プロデューサーの荒牧慶彦は、2.5次元というコンテンツの市民権のために、常に…

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