宝塚宙組東京公演「アナスタシア」観劇

三井住友カードミュージカル「アナスタシア」 脚本:テレンス・マクナリー音楽:ステファン・フラハティ作詞:リン・アレンス 潤色・演出:稲葉太地音楽監督・編曲:太田健編曲:高橋恵訳詞協力:高橋亜子音楽指揮:御崎惠振付:御織ゆみ乃、若央りさ、平澤智、百花沙里、三井聡擬闘:清家一斗装置:國包洋子衣装:河底美由紀照明:氷谷信雄音響:山本浩一小道具:三好佑磨歌唱指導:KIKO、西野誠映像:石田肇演出助手:町田菜花、栗田優香舞台進行:庄司哲久 プロローグのアニメーションで思い出した。そうだ、これは、ディズニー作品だった本作もオーケストラは録音となっているが、コーラスが重要なミュージカルであるため、指揮だけは、御崎惠先生が、生で、タクトを振っている。そのため、開演アナウンスも「指揮・御崎惠により、開演いたします」となっている。しかし、「宙組の真風涼帆です」の後に大きな拍手はあったが、「指揮・御崎惠により開演いたします」の後には、なにも起きなかった。私が、開演前の拍手について、記事を書いたのは、2018年の2月なので、3年の間に、事態は大きく転じてしまったことになる。その時の記事です。月組公演「カンパニー」では、開演アナウンスに拍手が起きない演出を無理矢理作っていた。それから3年で、どんな演出だろうと、「開演アナウンスの名乗りの時に拍手をして、その後は拍手をしない」ことがデフォルトになってしまったらしい。30年以上続いたことも、あっという間に変化するんだな…と、しみじみ思う。 「アナスタシア」は、ロマノフ王…

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「ピガール狂騒曲」感想 その3

宝塚歌劇月組東京公演「ピガール狂騒曲」の感想、その1はこちら、その2はこちらですが、ほぼ作品と脚本家への愚痴(別名、悪口)なので、出演者の感想をご覧になりたい方は、こちらの「その3」だけお読みくださいませ。 珠城りょう(ジャンヌ(ジャック)/バーレンベルク)…退団を控えた珠城に、新境地を、ということなのか、大劇場公演でヒロイン役が与えられた。男役トップスターが、大劇場公演でヒロイン役を演じるといえば、「ベルサイユのばら」のオスカル役や「風と共に去りぬ」のスカーレット役などがあるが、いずれも昭和時代の作品なので、トップスターとして、まさに新たな挑戦。「十二夜」のヴァイオラは、オスカルやスカーレットと違って、自分の人生を自分で切り開くタイプではなく、成り行きで男装しているだけの普通の女の子。しかし、珠城が演じることで、自分の人生に責任を持つ芯の強さが感じられた。また、バーレンベルクという、あまり背景を気にしなくてよい「ただのイケメン」を演じる時の、ものすごいオーラを久しぶりに感じられたのもよかった。主役だと、どうしても、色々なしがらみを抱えてしまうので、キラキラハンパない役は、それだけで貴重。男役としての充実は、フィナーレの各所で楽しむことができ、様々な珠城りょうを堪能できたと思う。 美園さくら(ガブリエル)…バタくさい芝居が身上の美園に、ガブリエル役はピッタリの配役だった。表情のひとつひとつまで、綿密な演技プランに基づいて作られているのだが、悉く私とは気が合わないのは、残念。まあ、これは好みの問…

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「Eternita」配信

珠城りょう3Days Special LIVE「Eternita」を配信で観た。このような事態でなければ、DSとして行われていた公演。そうであれば、まず、私などは観ることができなかったわけだから、配信で観られたのは、ラッキーだったのかな…と思ってしまう。ファンの方には、もちろん、忸怩たる思いがあったと想像するけれども。 まさかのマーチ・ラビット再びこの衣装、「BADDY」の時に、王子様(暁千星)用に作り直されたらしいのだけど、今回のために再度マーチ・ラビット仕様になったんだとか。「アリスの恋人」から、なんと10年…でも、逆に今の方が似合っている気がする。配信だから、PCの小さな画面を見ながら、あれこれ、思い出が蘇る。暗い劇場ではなくて明るい室内だからか、意識は散漫になって、目の前のことと、思い出が交錯する時間になっていく。 お披露目公演である「カルーセル輪舞曲」。つい、ほんの、昨日のような気がして、目の前の珠城が退団を控えているという現実が受け入れられない。おかしいなぁ~私、まだ、観たかったもの、いっぱいあったのに。ここから、主に別箱公演の楽曲が続く。特に、「月雲の皇子」は、再び、木梨軽皇子と穴穂皇子としてステージに立ってくれた感じで、本当に嬉しかった。もちろん、衣装は片袖だけ、着物に通す…みたいな形ではあったが。あと、個人的に「誰のために踊らされているのか」(1789)は、好きなナンバーだったので、選んでくれて嬉しかった。 新人公演時代のナンバーも楽しかった。鳳月杏と一緒に軽妙に歌ったり、…

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「ピガール狂騒曲」感想 その2

前回の記事、半分くらいのところで力尽きたので、続きを記載します。前回の記事は、こちらです。 S11 ムーラン・ルージュの新作に、ガブリエル(美園さくら)が出演することは、大きな話題になった。劇場の前でこの事実を知った、ガブリエルの夫、ウィリー(鳳月杏)は激怒し、交渉を託していた弁護士のボリス(風間柚乃)に怒りをぶちまけ、妻の監視を命令する。一方、ロートレック(千海華蘭)に案内されて登場した男は、ベルギーの貴族、バーレンベルク(珠城りょう)。どう見てもジャックにそっくりなこの男は、腹違いの妹を探すためにパリにやって来たのだった。 ボリスは、離婚を主張するガブリエルに対して、ウィリーが雇った弁護士。離婚したくない側が弁護士を雇うとすれば、相手の申し立てに法的な根拠がないことを説明するとか、逆に婚姻中の相手の問題点を指摘して離婚しても得にならないことを説明するとか…なのだが、そもそもガブリエルは、慰謝料を求めているわけではないし、親権を必要とする子供もいないので、ウィリーが弁護士を雇う理由はひとつもない気がする。まあ、そういうポジションなので、当然、ウィリーはボリスの使い道を誤って、弁護士に妻の監視を言いつける。まあウィリーはそういうキャラなので、そんなに気にならないが、ボリス、なぜ、従うもしかして、ドMなのかそして、バーレンベルク伯爵(だったよね)、登場した途端、バーンとスターオーラがハンパない。やっぱ、これよ、これが、宝塚トップスターの珠城りょうなのよと思ってしまった。もちろん、ヴィクトール・バ…

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宝塚月組「ピガール狂騒曲」感想 その1

ミュージカル「ピガール狂騒曲」~シェイクスピア原作「十二夜」より~ 作・演出:原田諒作曲・編曲:玉麻尚一録音音楽指揮:佐々田愛一郎振付:羽山紀代美、麻咲梨乃、AYAKO、百花沙里装置:松井るみ衣装:有村淳照明:勝柴次郎音響:大坪正仁小道具:下農直幸歌唱指導:西野誠演出助手:谷貴矢舞台進行:出合史奈 最初にひとこと、お断りを書かせていただく。私は、シェイクスピアが好きで、原田先生の作品が嫌い…という嗜好を持っている。そのため、今回の「ピガール狂騒曲」については、過去の原田作品の三倍レベルの悪口雑言を書きそうな勢いになっている。月組を愛し、この作品を愛する皆様は、よほど気持ちが強かったり、ドMでもない限りは、この辺でUターンをしていただきたい。出演者感想は別記事でやりますので、そちらをお待ちください 開演前から、ムーディーな音楽が流れている。作品の中でも何度も使われ、フィナーレのとっぱしで銀橋を渡る暁千星にも歌われるこの曲は、「赤い風車」。1952年の映画「赤い風車」の主題歌だ。この映画は、ロートレックの短い生涯を描いた作品とのことなので、おそらく本作の影の主役はロートレック(千海華蘭)だと、私は密かに思っている。 十二夜は、クリスマスから数えて十二番目の夜に行われる公現祭を指す。どうやら、大昔は、イエス・キリストの誕生日が12月25日と1月6日の両方祝われていたようで、その整合性を取るために、後世、東方の三博士によるイエス訪問により、イエスの存在が世に現れた(顕現した)日=公現祭という形で祝…

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宝塚月組東京公演「WELCOME TO TAKARAZUKA」観劇

JAPAN TRADITIONAL REVUE「WELCOME TO TAKARAZUKA-月と雪と花とー」 監修:坂東玉三郎作・演出:植田紳爾作曲・編曲・録音音楽指揮:吉田優子振付:花柳壽應、山村友五郎、花柳壽輔装置:関谷敏昭衣装:河底美由紀照明:勝柴次朗音響:加門清邦小道具:北垣綾歌唱指導:ちあきしん演出補:鈴木圭舞台進行:出合史奈 このようなご時世でなかったら、東京オリンピックを前に訪日外国人が多数訪れて、宝塚という文化に触れてくれる…そんな方々に向けて発信されるはずだった公演を、ほぼ鎖国状態の日本で、昔からのファンの面々が観ているーという、非常にシュールな舞台だった。東京オリンピックは1年延期になったのだから、この作品も1年後に作り直す…という風にはできなかったんだろうか。日本人に向けた日本物の作品には、どうしても思えない代物だった。かつて「ベルばら」を縦横無尽にアレンジしまくった植田先生も、そういう臨機応変の対応が無理になってしまったのかしら… 公演は、全6場で、とてもシンプル。1場 プロローグ2場 越天楽3場 雪(ヴィヴァルディ)4場 月(ベートーヴェン)5場 花(チャイコフスキー)6場 フィナーレ1場と6場に使われるテーマ曲は、「WELCOME」の言葉を繰り返す、バタ臭い歌詞が耳に残る。2場は、大劇場では初舞台生口上の場面だったところに、疫病退散の祈りを込めた月城かなとのソロ舞踊を入れている。伝統的な舞楽を取り入れた異色の場面。そして、雪月花の場面は、それぞれクラシックの名曲を…

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「シラノ・ド・ベルジュラック」配信

轟悠主演、星組シアター・ドラマシティ公演「シラノ・ド・ベルジュラック」の配信を見た。 シラノと言うと、私のような古いファンは、1995年の星組公演「剣と恋と虹と」を思い浮かべてしまう。あの時の公演では、シラノをそのままやるわけにはいかないと思ったのだろう、イケメンなエドモン(「シラノ・ド・ベルジュラック」の作者であるエドモン・ロスタンから名前を借りた)が、クリスティーヌ(=ロクサーヌ)の父を殺めてしまったことから、彼女への思いを口にせず、親友のジェラール(=クリスチャン)との恋を取り持つという設定になっていた。しかし、21世紀の宝塚は、そして、轟悠は、鼻が大きいシラノが主役の物語の上演を可能にしてしまった。 もちろん、付け鼻。絶妙な鼻だった。正面から見ると、それほど気にならない。でも横顔になると、やはり、少し高すぎるな…と思わせる。とはいえ、「これくらい大したことない」と思ってしまうのは、轟の美貌ゆえか。 剣豪で詩を愛する孤高の男、シラノ・ド・ベルジュラックの名場面が、原作戯曲に忠実に描かれた、とても誠実な舞台だと思った。脚本・演出の大野先生、どのような経緯でこの作品に挑戦することになったのか、まったく想像はできないが、よい仕事をされたな~と思う。 轟の独特のセリフ回しは、とても詩人らしく、ラストシーンのカタルシスに見事にハマった。ヒロイン、ロクサアヌを演じた小桜ほのかは、声の美しさ、まろやかさが魅力。ラストシーンの手紙の詠唱がとても大切な場面なので、彼女の声でぐっと盛り上がったと思う。ロ…

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「はいからさんが通る」感想 その2

花組公演「はいからさんが通る」、感想のその1はこちらです。 トップコンビの感想は「その1」の方に記載しています。 瀬戸かずや(青江冬星)…初演の鳳月杏が組替えしてしまったので、2番手の瀬戸が少尉の恋のライバルとなる、冬星を演じた。瀬戸のキャラなのか、最初からあったかい人だということがバレバレ。新しいタイプの冬星で、新生花組は、こういうトライアングルなんだな~と、実感できる配役でした。憎めない人物で、最後の少尉との殴り合いもかっこよく…でも、あの場面でのノー上着スタイルは、ちなつちゃん専用だったんだ~と思ってみたり。上級生2番手として、かれーくん(柚香光)の前に立ちはだかる存在になってくれると、色々面白い作品が観られそう 英真なおき(伊集院伯爵)…今回も、可愛いおじいちゃんでした 美穂圭子(伊集院伯爵夫人)…素の美穂さん、とても可愛らしいお声なのですが、それを生かした配役だなぁと思った。とても過酷な人生を過ごしてきた方なのに、可愛らしさを失わず、前向きに生きている…そんな素敵なおばあさまだなぁ~と、観劇のたびにほっこりさせたもらった。 高翔みず希(リーダー)…こういうお役は珍しいと思うけど、冷酷な雰囲気が出ていて、ちょっと意外。よき配役だったと思う。 冴月瑠那(花村政次郎)…紅緒の色々な行動にいつも頭を抱えている姿が可愛い。でも、軍服が似合っていて、とてもダンディ。よきおじさまになったなぁ 水美舞斗(鬼島森吾)…初演と同じ配役だったし、もう、鬼島さんにしか見えない 朝月希和(花乃屋吉…

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宝塚花組東京公演「はいからさんが通る」観劇

令和2年度文化庁芸術祭参加作品ミュージカル浪漫「はいからさんが通る」 原作:大和和紀脚本・演出:小柳奈穂子作曲・編曲:手島恭子作曲・編曲・録音:藤間仁(Elements Garden)録音音楽指揮:佐々田愛一郎振付:御織ゆみ乃、若央りさ、AYAKO殺陣:清家三彦装置:稲生英介衣装:加藤真美照明:佐渡孝治音響:秀島正一小道具:市川ふみ歌唱指導:彩華千鶴演技指導:彩吹真央三味線指導:今藤和歌由特殊メイク:馮啓孝演出補:生田大和演出助手:指田珠子舞台進行:香取克英 2017年に柚香光主演で上演された「はいからさんが通る」が大劇場のステージで再演され、それが、柚香の大劇場お披露目公演となった。トップ娘役の華優希は、そのまま花村紅緒を演じる。2017年の時点で、このことが想定されていたのか、柚香・華のお披露目としてベストな作品を考える中で、二人が主演した「はいからさん…」が俎上にのぼったのか、本当のところはわからないが、結果として、期待していた以上の、素晴らしいお披露目公演になったと思う。3年前の別箱公演…ということは、当時から退団、組替えで去っていったキャストがいる。一方で、別公演に出ていて出演していなかった生徒、組替えで入ってきた生徒もいる。演出の小柳先生は、このような場合、オリジナルキャストを極力変更せずに公演を行いたい派とお見受けする。2011年と2012年に星組で上演された「めぐり会いは再び」とその続編の間に、退団や組替えがあったのだが、キャストの変更は行わず、退団者・組替え者が演じた役につい…

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宝塚雪組東京特別公演「NOW!ZOOM ME!!」観劇

望海風斗MEGA LIVE TOUR「NOW!ZOOM ME!!」 作・演出:齋藤吉正作曲・編曲:手島恭子、長谷川雅大振付:若央りさ、AYAKO、港ゆりか、百花沙里装置:國包洋子衣装:加藤真美照明:佐渡孝治音響:山本浩一小道具:今岡美也子映像監督:高橋栄樹イリュージョン:北見伸歌唱指導:HANNA BUNYA演出助手:平松結有映像企画プロデューサー:濱本有紀(凸版印刷)映像制作プロデューサー:後藤和弘映像アートディレクター:CONCENT LAN舞台進行:押川麻衣舞台美術製作:株式会社宝塚舞台演奏コーディネート:新音楽協会制作:谷口真也制作補:松倉靖恵制作・著作:宝塚歌劇団主催:阪急電鉄株式会社映像協力:Y&N Brothers、凸版印刷株式会社メイク協力:M・A・C 映像配信を見た、という記事で、第1幕のことを記載したので、ここでは主に、第2幕のことを(A)(B)(C)それぞれのバージョンを含めて記載していきたい。が、とりあえず、B席とはいえ、千秋楽を観劇できた奇跡チケットの神様、ありがとう 第I幕は、こちらでリポートしています。観劇したのは、千秋楽なので(A)パターンですが、配信で見た(B)(C)についても、本記事に記載します。入り乱れてしまいますが、時系列の方を重視しました 106年雪組アヤナギ先生というベタな場面から、第II幕は始まる。「3年B組金八先生」のパロディだが、えーと、これ、今の人に伝わってる(アヤナギ先生が演じていたのは、本当に初期の頃のかなり長髪だった金八先生…

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