宝塚歌劇「夢千鳥」配信観劇

緊急事態宣言の影響で、公演が飛んでしまった宝塚の各公演。揃って配信公演を実施してくれた。このため、チケットが取れなかった公演も、映像で見られることになった。チケットを持っていた公演が中止になってしまった悲しみは、配信を見ても癒えることはないが、こういうラッキーもあるので、どっこいどっこいなのかな…なんて、判断力が弱くなった頭で、うっすらと考えている。 「夢千鳥」は、竹久夢二と彼を取り巻く女たちの物語(大正時代)と、その夢二を主役にした映画の撮影周辺の物語(昭和時代)が交錯する作品。主演の和希そらは、夢二と映画監督の白澤を演じる。他の出演者も、両方の世界で、それぞれの役を演じている。夢二らは、白澤が撮る映画の登場人物という側面もあるし、作・演出の栗田先生が描こうとする夢二やその恋人たちそのものでもある。そんな多面的な構造が、現代の倫理観では、ちょっと引いてしまうような、竹久夢二という男の恋の物語を、嫌悪感少な目で見せることに成功したのかな…と感じた。 和希は、多くの女に愛され、同時に複数の女性と交際する、竹久夢二と白澤監督の二役を演じているが、けだるい雰囲気を漂わせて、女性たちを翻弄するものの、繊細で寂しがりやな内面を抱えている男を好演。娘役たちも、普段の娘役芸では太刀打ちできないような、キャラクターに果敢に挑戦し、タカラジェンヌの芸域の広さを示した。天彩峰里の美しさには、ハッとさせられる。また、彦乃を演じた山吹ひばりの瑞々しさ、歌の上手さにも驚いた。新たな、トップ娘役候補の誕生。本公演でも、ど…

続きを読む

「ホテル スヴィッツラ ハウス」配信観劇

「ホテル スヴィッツラ ハウス」の配信を観劇。このライビュ&配信は、「エリザベート25周年ガラコンサート」千秋楽ライビュの終了後30分程度でスタートする…ということが、だいぶ後出しで発表された。そして、私がエリザライビュを観た映画館では、HSHのライビュは実施されないのだ。発表された時は、エリザライビュを取りなおそうか…とか、色々考えたけど、楽天テレビはスマホからも観られるので、映画館から帰りつつ観ようかな…と決めた。なのだが、実際には、帰宅が間に合い、PCの大きめの画面で観劇できた。ラッキーてか、最寄りの映画館から、15分で帰宅できるのね、おいら。もっと映画見よう 本作、真風涼帆&潤花の宙組新トップコンビのプレお披露目公演となっている。組んで3年のトップコンビを解体して、それぞれ別の相手役と組ませるというのは、劇団としても、大きな冒険だったと思うが、その前に劇団は、近い将来のトップ娘役候補である、当時雪組の潤花と、当時宙組の夢白あやをトレードしている。その時、潤は、次期トップ就任前の雪組・彩風咲奈の別箱公演で相手役を務めた直後だったので、「え、彩風の相手役じゃなかったの」と、ひどく驚いた。その劇団の「賭け」の結果がどう出るか、それを確かめるという意味もあっての配信観劇となった。 ドラマは、第二次世界大戦中のスイス。永世中立国のこの国は、それゆえに、各国の外交官やスパイが往来する「謀略の十字路」になっているらしい。ホテルスヴィッツラハウスに現れた貴族のロベルト(真風)は外交官として、任務のため…

続きを読む

花組大劇場公演

花組大劇場公演を観劇するために、宝塚に足を踏み入れた。3月にバウホール公演を観ているので、そんなに時間は経っていない。桜は、まだ散らずに私を迎えてくれた。 だいぶ、葉桜になっているけど。 11時公演に間に合うように出かけたのは1月以来になるが、さすがに暗い中の出発ではなくなっていた。もう春分も過ぎたんだな~なんて思いつつ、6時台の新幹線で関西入り。 ムラに着き、風が吹くとハラハラと花びらを散らす桜を眺めながら、大劇場に向かう。劇場に着いて、検温・手指消毒を行い、中へ。少し早く着いたため、まだ大劇場内には入れない。キャトル・レーヴに行ってみると、普通に入れた。ラッキー東京の整理券方式はいつまで続くのかな… 余裕をもって劇場に入り、プログラムを購入して、着席。ありがたくも、SS席やや上手という良席。お芝居は、田渕大輔先生の「アウグストゥスー尊厳ある者ー」。以下、恒例により、箇条書きで感想を記載していきたい。 ・宝塚歌劇の主人公のひとつの形として、「受け」の芝居を見せる…というものがある。最近ファンになった方は、意外と知らないのかもしれないが、これは、むしろ王道である。(「この恋は雲の涯まで」など)そして、本作は、王道の宝塚歌劇を踏襲していると思った。みずから行動を起こさないのが主人公の格の高さを表すというか。しー・主人公が上手の花道から初登場することに不満の声もあるが、花道から主役が登場する例など、いくつもある。芝居くらい、もっと自由に作らせてあげたいと思う。・登場人物の設定、関係性など、面…

続きを読む

ショー「シルクロード」感想(「fff」出演者感想付)

ショー感想の前に、「fff」の主要4人(ベートーヴェン、謎の女、ナポレオン、ゲーテ)以外の、気になった出演者について記載したい。 一樹千尋(ケルブ)…「何が正しいかは私が決める」という誰も寄せつけないものがあって、文句は言っても抗うことができない…という音楽家たちの気持ちはよくわかる。でも、「歓喜の歌」を聴きながら、ちょっとウキウキしてる姿が可愛いのよね。 奏乃はると(ヨハン)…モーツァルトの父のように息子を引き回したかったけど、できなかった飲んだくれのダメ父の悲哀が出てました。本当にダメ父だけど。 沙月愛奈(ロッテ)…上演された舞台「若きウェルテルの悩み」でロッテ役を演じ、踊る。その後も、ロッテ的なものの象徴として、ベートーヴェンの世界に登場する。踊る沙月の説得力がうまく出た起用。美しかったです 千風カレン(オーストリア皇后)…音楽への造詣が深い皇后様でした。 透真かずき(皇帝フランツ一世)…鷹揚で、失礼なベートーヴェンに対しても決してカチンときた様子を見せないあたり、ホンモノの王族だな~と思いましたナポレオンのことは、本当に嫌いだったみたいね。でも、王女はナポレオンの皇妃になるのよね…心中、お察しします 真那春人(ヘンデル)…バッハは天国に行けたのに、天国に行けないヘンデル。何がいけなかったのか狂言回しとして、実力を発揮 笙乃茅桜(小さな炎/マリア)…ベートーヴェンの心に芽生えた小さな炎を、彼の人生の節々でダンスで表現。まさに、炎の妖精のような素晴らしいお姿でしたマリアは、力なき…

続きを読む

宝塚月組バウホール公演「幽霊刑事」観劇

バウ・プレイ「幽霊刑事」 原作:有栖川有栖脚本・演出:石田昌也作曲・編曲:手島恭子振付:平澤智、AYAKO擬闘:清家三彦装置:稲生英介衣装:加藤真美照明:安藤俊雄音響:山本浩一小道具:福井良安嗣歌唱指導:山口正義演出助手:指田珠子、栗田優香舞台進行:阪田健嗣舞台美術製作:株式会社宝塚舞台録音演奏:宝塚ニューサウンズ制作:真加部隼制作補:西尾雅彦制作・著作:宝塚歌劇団主催:阪急電鉄株式会社 珠城りょうの「サヨナラする、その前に」というサブタイトルがついたバウホール公演、緊急事態宣言下という状況だったから、なのだろうか、有難くも観劇することができた。プログラムの演出家挨拶を読むと、「恋愛要素も匂わせつつ、鳳月杏とのバディー物の要素も…と依頼され」とある。恋愛相手は誰でもいいが(トップコンビのプレサヨナラ作品は、あえて別々に行われる。DSとMS開催が多い)、バディー相手は、鳳月杏限定なのか…なんか、胸アツである。珠城りょうの主演作品を、節目節目で手がけた石田先生。上田久美子と石田先生、ある意味両極端の演出家に育てられたからこそ、これだけの振り幅を持つスターになったのかもしれない。(ゆうひさんも、そういえば、節目節目で石田先生にお世話になっている。)(今、あらためてプログラムを眺めているが、裏表紙が…たまらん…) 刑事、神崎達也(珠城りょう)は、冒頭、上司の経堂芳郎(光月るう)に殺害され、幽霊になる。母(京三紗)も妹(結愛かれん)も婚約者の森須磨子(天紫珠李)も、幽霊になった達也に気がつかない。しか…

続きを読む

宝塚歌劇雪組東京公演「fff」観劇

かんぽ生命ドリームシアターミュージカル・シンフォニア「fff(フォルティッシッシモ)ー歓喜に歌え!ー」 作・演出:上田久美子作曲・編曲・録音音楽指揮:甲斐正人振付:前田清実、AYAKO擬闘:栗原直樹装置:大橋泰弘衣装:有村淳照明:勝柴次朗音響:大坪正仁小道具:市川ふみ映像:上田大樹歌唱指導:ちあきしん演出助手:生駒怜子舞台進行:宮脇学 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。日本で、おそらく一番有名な、そして愛されているクラシックの作曲家ではないかと思う。かく言う私も、一番最初に買ってもらったクラシックのレコード(←世代感)が、「エリーゼのために」だったこともあり、幼い頃から親しんでいた。その後、ショパン、リスト、チャイコフスキー…と、好きな作曲家は変遷していくが、結局、やっぱり、ベートーヴェンよねと、最近は思う。特に、彼の作曲したピアノソナタは、発表会で演奏したこともあり、魂の中に刻み込まれていたりする。(あまりに昔過ぎて、作品番号とか覚えていないですが、同じ発表会で誰ともかぶっていなかったので、本当にマイナーな曲なんだと思います。でも、全音のソナタアルバムの1曲ではあります。)本作は、ベートーヴェン(望海風斗)、謎の女(真彩希帆)、ナポレオン(彩風咲奈)、ゲーテ(彩凪翔)をメインに、歴史的事実を解体してパズルのピースのように組み上げて、魂の物語として再構築した作品になっている。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンという偉人の人生をなぞるのではなく、ベートーヴェンの本質を探る旅に出るような、そ…

続きを読む

「アナスタシア」感想 その2

宝塚歌劇宙組公演「アナスタシア」の作品・演出感想は、こちらで語っております。よかったら、どうぞ。 というわけで、ここから、出演者感想です。 真風涼帆(ディミトリ)…ブロードウェイ・ミュージカル作品をしっかり歌い切っていたし、背負っていて、すっかり立派なトップさんだな~と、感動。ディミトリは、アーニャをアナスタシア皇女に仕立てて、皇太后から報奨金をせしめる詐欺師という設定だが、そこに至るまでのディミトリという人間が、違和感なく存在していた。あと、バレエ鑑賞の場面からの「芝居での燕尾服」姿の美しさに脱帽ショーの黒燕尾がカッコいいのは男役として当然なわけだが、男役然としていてはおかしい芝居のシーンで、これほどまでに美しいとは…素晴らしかったです 星風まどか(アーニャ)…バイタリティ溢れるヒロインを、強い意志の力で演じ切った。記憶を失い、自分が何者なのかを探し続け、ものすごい距離を歩いてサンクトペテルブルク(レニングラード)にやってきた娘。「パリに行けば、何かがわかるかもしれない」かすかな記憶だけを頼りに。ディミトリと運命的に出会い、君がアナスタシアかもしれない、と言われ、断片的に蘇る記憶にも助けられて。ディミトリの目的は明確に提示されているが、そこに乗ろうとするアーニャの本当の気持ちは、場面的に省略されているので、推察するしかない。そこが星風の迷いのない演技で助けられた気がする。歌声も素晴らしかったし、バレエ鑑賞場面のドレスが本当によく似合っていて、美しかった。花組トップ娘役として、さらなる充実を…

続きを読む

「NICE WORK IF YOU CAN GET IT」配信

禁酒法時代のNYが舞台。ヒロインのビリー(華優希)は、もぐり酒場に酒を調達して稼いでいるバイタリティ溢れる女の子。(実はギャングの一味)もぐり酒場では、明日4度目の結婚を控えている御曹司のジミー(柚香光)が、独身最後の夜のバカ騒ぎしている。そんな二人のドタバタ・ラブロマンスをガーシュウィンのナンバーに乗せて綴っていくというミュージカル。ストーリーも音楽もレトロなんだけど、BW初演は、2012年。意外…演出は、雪組の「20世紀号に乗って」も手掛けた、原田諒先生。こういう罪のない作品を演出してくれた方が、私も嬉しいんだけどなとはいえ、劇場で見るのと違って、キャストの顔ばっかり見ていて、物語が全然頭に入ってこない。なので、感想も断片的。華ちゃんビリーが、めちゃくちゃ可愛い(全体の9割、この感想)そんなビリーに、メロメロになっちゃう、かれーくんが、とても可愛いアイリーン(永久輝せあ)、いつまで風呂入ってるの~飛龍つかさ演じるデュークと、上昇志向溢れるジェニー(音くり寿)の勘違いから始まる恋も可愛いなぁ私の働かない頭でも、ビリーの上司(ギャングのボス)がジミーのママ(五峰亜季)というのは、読めたぞトップコンビだけでなく、みんなハッピーエンドになっていたのも、お正月らしくてよかった。中でも、瀬戸かずや演じるクッキーと鞠花ゆめ演じるエストニア公爵夫人のバチバチが、楽しすぎた。 公演チケットがどうしても手に入らず、(平日に休めない時期だったこともあり…)公演を観ることはできなかったけど、配信で少しでも雰囲気を知…

続きを読む

宝塚花組バウホール公演「PRINCE OF ROSES」観劇

バウ・ミュージカル「PRINCE OF ROSESー王冠に導かれし男ー」 作・演出:竹田悠一郎作曲・編曲:太田健、瓜生明希葉、多田里紗振付:御織ゆみ乃、平澤智殺陣:清家三彦装置:國包洋子衣装:加藤真美照明:佐渡孝治音響:秀島正一小道具:下農直幸歌唱指導:堂ノ脇恭子演出助手:平松結有舞台進行:押川麻衣舞台美術製作:株式会社宝塚舞台録音演奏:宝塚ニューサウンズ制作:藤枝太一制作補:恵見和弘制作・著作:宝塚歌劇団主催:阪急電鉄株式会社 タイトル、日本語だと「バラの国の王子」ですね。…すみません、トラウマが… もちろん、「美女と野獣」のお話ではなく、バラ戦争を終わらせたイギリス国王、ヘンリー7世の物語です。この時代の物語は、あまり、宝塚では、やらないかな。大学(短大)時代、英文科だったので、一般教養として英米国史も勉強していたが、とにかく、この時代、エドワードとリチャードとヘンリーが何人も出てくる…いや、それしか出てこなかった記憶が…。この時代を戯曲化するのは、ものすごく大変だと思う。竹田先生…デビュー作なのに、あえてここを狙ってくるとは… 15世紀のイングランド。国王ヘンリー6世(冴月瑠那)に引き合わされた一人の少年。ヘンリー6世の異父弟を父に持つ、ヘンリー・テューダー(聖乃あすか)。その場にいる誰もが、彼こそが、王冠を継ぐべき男であると予感する。しかし、その後、王位は、エドワード4世(羽立光来)に奪還され、ヘンリー6世(ロンドン塔に幽閉され、亡くなる)の後継者と目されたヘンリー・テューダーは、…

続きを読む

宝塚雪組大劇場公演

久しぶりに宝塚大劇場へ。いつぶりだろうスマホの撮影記録を見ると、2019年の9月ぶりらしい。関西へは、何度か来ているので、そこまで久しぶりとは思わなかった今回は、友人と一緒のツアー。東京から一緒に出発して一緒に戻ってくる的な観劇旅行、実は、そんなにしていなくて。(いつも、現地集合現地解散)公演もだけど、このご時世、旅自体(NEWタカホに泊まるのが目的のひとつ)がひとつの目標でもあったので、一泊二日だったが、とても楽しい時間を過ごした。 1月なので、地元の駅を出るときは、まだ空が暗くて、満月がよく見えた。満月がこんなに輝いているということは、まだ暗いけど、天気は良かった、ということ。新幹線の中では、ずっとマスクをしつつ…ではあったが、三人横並びで話が弾む時間も。朝早かったので、途中、気がついたら、うとうとしていたけれど…。 ふと目が覚めると…もしもし マジで大雪原じゃないですかっこのまま関西も大雪なんでしょうかと、焦ってしまった…まあ、ここは関ケ原付近で、雪が多いところ。関西方面は、よきお天気でした ということで、30日は、大劇場公演「fff/シルクロード」を観劇。感想は、恒例により、箇条書きで書いていきます。 ・「fff」は、ベートーヴェンを主役に据えた物語。ショパンやリストやチャイコフスキー…色々な音楽家が好きだったけど、ここ10年くらいは、「どんなにベタでもやっぱ、ベートーヴェンだよね」という気持ちになっているので、興味津々。・歴史上の人物を主役に据えた作品の作り方として、これまでに…

続きを読む