ふるさとの「びわこ」のほとりで

今朝、テレビを見ながら用意をしていたら、この番組で、「琵琶湖」の名称は、伊能忠敬が琵琶湖を測量して、その形が楽器の琵琶に似ていることが分かったので付いた呼称だと言っていた。伊能忠敬って…江戸時代かよっ「美しき生涯」のテーマ曲の最後、♪ふるさとの琵琶湖のほとりで♪というフレーズが大好きだったので、朝から、かなりテンションダウン…でも、帰って来てから、気を取り直して、一応調べました。琵琶湖は、少なくとも今から40万年前には今の場所に存在していたという。世界でも有数の古代湖といえる。古くは、近淡海(ちかつあわうみ)、淡海、水海、湖、近江の海、細波、鳰の海(におのうみ)などと呼ばれていた。あんなに大きい湖なので、普通名詞=固有名詞で、「みずうみ」とよばれても不思議ではないかも。一般に「琵琶湖」という呼称がポピュラーになったのは、やはり、江戸時代らしい。でも、形状が琵琶の形に似ているということは、既に14世紀には文献に登場するという。固有名詞としての「琵琶湖」が文献に初登場するのは、16世紀初頭、室町時代とのことなので、戦国時代にも「琵琶湖」という名称は、関西では使われていたかもしれない…と…思いたい…

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女ってこわい

テレビドラマは、女性が主人公であるものが多い。そして、主人公の心理は綿密に描かれるものなので、ヒロインを怖いと思うことはない。しかし、この「美しき生涯」は、宝塚なので、男性を主人公にしている。ヒロインの姿は、基本的に主人公の目線から描かれる。だから、何を考えているのか、分かりにくい。心理が分からずに行動だけ見ていると、「女ってこわい」と思ってしまう。いやー、自分も同じ女なんだけど、私の中には、こういう部分が全くないので、余計に…茶々という女性は、基本的に、思ったことを口にする分かりやすい性格だと思う。それが、秀吉の側室になった途端、思いを口にする場面がなくなってしまう。思いを口にしないのに、出てくる事象は、三成の子を秀吉の子として産み、子を産んだことで、秀吉を懐柔している、とか、若さで秀吉の精気を全部吸い取っているとか、疾風のそそのかしを否定しつつ、ナレーションの歌ではやっぱりその後、秀次が切腹になっている、とか。こわい、こわいわ、この人、何を望んでいるの?無骨な三成が、やってることがどうかは別にして、考えることは単純で分かりやすいのとは対照的。なんでそんなに分からないのか、というと、そうやった上で茶々が求めているもの…目的が分からないから、なのではないかと思う。茶々の願いは、ひとつ、のはず。三成と一緒になりたいでもその願いは叶わない。だったら、どうしたいのか?茶々に野望(政治的野心)はない…はず。では、なんのために彼女は、こんなギリギリのゲームを続けているのか。最後には、最愛の三成を切り捨ててま…

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「美しき生涯」年齢早見表

観劇のお供にどうぞ!(年齢は、現代人にわかりやすいように、満年齢で記載しています。)秀吉と茶々は、どうやら生年に数説ある様子。「歌劇」誌5月号では、茶々が三成の6-9歳年上というような解説ページがありましたが、それはどうやら間違っているようで、三成が茶々の6-9歳年上、というのが正しい年齢差のようです。なお、「信長公記」によれば、浅井長政と市の結婚が永禄10(1567)年なので、1566年・1567年説を取ると、茶々が市の連れ子であったということになります。西暦 三成 茶々 できごと1536年 ――豊臣秀吉誕生(1537年説もあり1560年 0歳 ― 石田三成誕生1566年 6歳 0歳 浅井茶々誕生か?1567年 7歳 0歳 浅井茶々誕生か?1569年 9歳 0歳 浅井茶々誕生か? 1573年 13歳 4-7歳 小谷城落城して、市と三姉妹救出される。父は死去。1574年 14歳 5-8歳 三成、父・兄とともに羽柴秀吉に仕官。三成は小姓となる。1582年 22歳 13-16歳 茶々の伯父、織田信長死去。再婚した母に連れられて北庄城へ。1583年 23歳 14-17歳 三成、賤ヶ岳の戦いに参加。北庄城落城し、三姉妹救出される。市は死去。1585年 25歳 16-19歳 秀吉が関白に昇進。これに伴い、三成は従五位下治部少輔に叙任。1588年 28歳 19-22歳 茶々、この頃、豊臣秀吉(51-52歳)の第二夫人(側室?)となる。1589年 29歳 20-23歳 茶々、捨(鶴松)出産。これを機に淀と呼ばれ…

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「美しき生涯」最大の突っ込みどころ

「美しき生涯」をラストから逆に見ていくと…関ヶ原合戦。東軍の徳川家康と西軍の石田三成、彼らが挙兵してまで雌雄を決したかったのは、「徳川による天下」か「秀吉亡き後も豊臣による天下」か、ということだろう。「…だから徳川には任せられない」という政治的・論理的な理由ではなかった。秀吉が死んだ時、後継者秀頼の後見人という立場を逸脱してあたかも天下人であるような行動を取り始めた家康に対して、「簒奪許すまじ」として挙兵したのが三成だった。彼が主張する「豊臣による天下」とは、「秀頼を主君として豊臣家による支配を継続させる」ことにほかならない。それが忠義であり正義であると。でも、秀頼が三成の子であったら、三成こそが、お家乗っ取り、天下簒奪者になってしまう。秀吉の子でない(かもしれない)秀頼をそれでも立てなければならない理由は、「秀吉が後継者に指名した」ことだが、それを大義名分として戦う総大将として、唯一、実父だけは相応しくないだろう。7歳の秀頼が天下を取った時、彼を補佐するのが実父なら、それは秀頼を傀儡とした、事実上の天下簒奪だ。正義の戦いにはならない。たとえそうしなければ、「主君秀頼の生母」としての淀が生きていけないのであっても、そのために戦うのは、「義」ではなく「愛」のためということになってしまう。また、もし、この芝居のテーマ曲通り「愛」に生きることだけが二人の夢なのであれば、(=政治的な欲はない)家康に逆らう必要はない。豊臣政権下で織田氏は生き残った。家臣として。同じように徳川家臣としてであれば、秀頼には生き…

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「美しき生涯」の七本槍

七本槍の実像を調べたところで、今度は、「美しき生涯」に登場する七本槍について、考察してみたい。「美しき生涯」では、七本槍の7人、全員が揃って登場するのは、冒頭の毛槍を振る場面、おねのにぎり飯を食べる場面、北庄城落城の祝の席での名乗り、そして大坂城ロック、の4場面かな?あとは、何人かピックアップしての登場。鶴松の出生疑惑は、春風弥里・鳳翔大・蓮水ゆうや・凪七瑠海の4人。おねの裏切り指示は、北翔海莉・悠未ひろ・十輝いりす・春風の4人。ここはそれぞれ槍番号の下から4人、上から4人。4番槍の春風が両方に出れてお得な感じ。大坂城ロックの前に、北翔・悠未のコミカルなシーンが少しある。関ヶ原は、福島正則(北翔)以外は、ただの武将という扱いだが、東軍に北翔・悠未・十輝・春風・鳳翔・凪七が、西軍に蓮水が参加している。これは、蓮水の演じている糟屋武則が唯一西軍から参戦していることを配慮してのことだとして。関ヶ原後の場面は、まず、北翔・十輝・春風・凪七が酔っているところに、鳳翔が後から現れ、この五人は「裏切り者」として三成の面前で家康の皮肉を浴びる。悠未演じる東軍武将は、三成に斬り殺されていたし、悠未本役の加藤清正は関ヶ原の時には九州にいた、そういうことを配慮しているとして。史実では、東軍に参加予定だった脇坂安治(春風)は、家康が上杉を討たずに反転した時大坂城内にいて、西軍に参加せざるを得なかった。そして、小早川の寝返りに乗じて、一緒に西軍を攻めたという。小早川秀秋という武将は、この芝居の中でそれまでセリフの中ですら語…

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七本槍の実像

「美しき生涯」の中で、スタークラスの男役達によって演じられている“七本槍”チーム。だいたい7人一緒に登場する彼らのうち、関ヶ原には、糟屋武則役のちーちゃんが東軍には登場しない。(西軍武将として戦っている。)不思議だなーと思って調べてみると、糟屋は関ヶ原に西軍(石田側)で参戦していたことがわかった。そして、柴田勝家を滅ぼした賤ヶ岳の戦いで活躍した七人を「秀吉の七本槍」と称しただけで、その生まれや、後の人生は、まったく違う七人だったことを知った。なかなか面白かったので、ここに紹介しておきたい。最初に早見表を作ってみた。氏名 出自 文禄慶長 三成暗殺計画 関ヶ原東軍 大坂の陣福島正則 秀吉親戚 〇 〇 〇 △加藤清正 秀吉親戚〇 〇 △ ―加藤嘉明 家康家臣 〇 〇 〇 △脇坂安治 浅井家臣 〇 × ▲ ―平野長泰 秀吉子飼 ? × 〇 ▲糟屋武則 織田家臣 △ × × ―片桐且元 浅井家臣 △ × × 〇 平野長泰が文禄・慶長の役に参戦していたかどうかは、彼の禄が少ないので記録から漏れていてわからなかった…関ヶ原については、実は東軍参戦は、たった三人だった!加藤清正は、家康に味方しつつ、地元九州で戦っていた。脇坂安治は、家康に味方する予定が、時期が悪く西軍から参加せざるを得なかったので、小早川の裏切りに乗じて寝返った。片桐且元は、大坂城の秀頼の元に留まったので、気持ちはともかく姿勢はほぼ西軍。大坂の陣に至っては、原因を作った片桐以外誰も徳川に付いていない。結局関ヶ原で東軍についたところで、豊臣家臣団に…

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シェイクスピアとは違う…!「ロミオとジュリエット」への違和感

「ロミオとジュリエット」は不朽の名作で、リメイクもされているし、WSS(「ウェストサイド物語」)のように派生作品も生まれている。そのWSSだってもはや古典だが、生き残ったのは、「ロミオとジュリエット」を逸脱した部分のプロットが秀逸だったからだろう。それほどこの名作は、完璧なプロットを持っているし、長年の各国での上演の間に、古今東西の優秀な演出家が、シェイクスピアの書いたセリフのひとつひとつを完璧に補強してしまっている。だから、「ロミオとジュリエット」の名のもとに、これらのプロットを一つでも変更することは、影響下にある大小さまざまな関連項目の調整ができて初めて、可能となる。今回のミュージカルは、プレスギュルヴィックのオリジナル脚本がそうなのか、小池修一郎潤色がそうなのかはわからないが、「ロミオとジュリエット」に親しんできた私にとっては、違和感があった。あちこち疑問だらけ…誰か、教えて!【1.オトナはいない?】ヴェローナの街は、モンタギュー家とキャピュレット家の諍いのため、絶え間なくいざこざが起こり、市民の安全が脅かされていた。そこで大公は、今度争いによってなにかが起きたら、厳罰を科すと宣言する。モンタギューとキャピュレットはヴェローナの名家。それぞれの家族だけでなく使用人、その親戚や関係者…となれば、多くの人々が両家の関係者になるだろう。また、異なる二つの勢力が拮抗している場合、街の人々も、なんとなくどっちかの派閥に所属していることが多い。日本で言えば、群馬県辺りの福田か、中曽根か、みたいな?どっち…

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「エメ」という曲

大阪で初めて聴いた時、「エーメン」と聴き間違ったからじゃないけど、東京に来ても「エメ」に違和感を抱いている。ミュージカル好きな友達から、ウィーン版は「リーベ」だったよ、と聞いたからかもしれない。フランス版で「エメ」、ウィーン版で「リーベ」なら、日本版は「愛」でしょ、やっぱ。(細かいことを言えば、「エメ」は動詞だから、“愛せ!”という意味。“愛せ、愛せ、愛せ”なんて、「LILIES」みたいだな…って、マニアックなことを書いてしまった…)なんで、「愛」じゃいけないの?だって、これ、ヴェローナの話だよ。ヴェローナったら、イタリアですよ。みんな、大空祐飛さんも勉強していると噂のイタリア語を話しているわけで、だから、イタリア語なら、納得して引き下がるってものだが、ヴェローナでフランス語、違和感あり!しかも、“エメ”…「e」音は、伸ばすとだらしなく聞こえる。♪エーメー♪と歌われ続けるのはなぁ…。もちろん、一般人じゃない、タカラジェンヌだから、実際には、だらしなくは聞こえないが、あまり綺麗な音とも思わない。やっぱり、「愛」がいいなぁ。後々、この曲が宝塚の財産になった時、「愛!」(鴨川清作)とかぶるってことを心配してるんだろうか?でも、それはないよね。だって、「愛と死の輪舞」も「ひとかけらの勇気」も宝塚オリジナルの曲だけど、「エメ」は元々存在する曲だもの。あー、どうして、「エメ」なんだぁ!

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しなやかなマッチョ

アメリカ人青年、ロバート・ジョーダン。ヘミングウェイが創作したこの人物は、ヘミングウェイが生涯拘り続けたマッチョな男だ。そして大空祐飛の男役としての資質は、ヘミングウェイを羨ましく思いつつ、ヘミングウェイにはなれなかったフィッツジェラルドに近い。そういう繊細な心の襞を表現することで、大空は、独自性をアピールし、こんにちの立場を築いてきた。そんな大空が、ヘミングウェイ作品に挑戦した(=ヘミングウェイの考える“男”を体現した)、ということが、まず、この公演の面白いところだと思う。マッチョと聞くと、ついつい体型に気が行ってしまうが、そうやって鍛え上げた肉体に相応しい、鍛えられた健全な精神こそがマッチョの真髄。決して敵に背を向けたりしない男らしさは、十分宝塚の男役の表現範囲にあると言える。逆に、うじうじくよくよしている主人公は、バウホールやドラマシティでは主役になり得ても、2000人規模の劇場で1ケ月間上演する作品の主人公には相応しくないので、トップになった大空が、自らの個性を生かしつつ、骨太な男達に扮するようになったのは、しごく当然の流れではある。その延長線上で、ロバート・ジョーダンを演じることもまた、納得のラインアップだった。とはいえ、映画にもなった有名な作品のヒーローをどう魅せるか、は、また別の話なわけで、その辺に注目した今回の公演―大空のロバートは、まず、アメリカ人青年である、というところがクリアだった。これが日本の作品だったら、任務のためとはいえ、仲間のカシュキンを撃ち殺した時から、ロバートは死…

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木村信司のミザンセーヌ

2年位前に、小池修一郎のミザンセーヌについて書いたことがあった。こちらです。ミザンセーヌって何かという話も、たしかそこに書いた気がする。人や物の導線だ、と演出家の山田和也氏はおっしゃっておられる。ま、簡単に言えば、Aさんが上手から出たらBさんは下手から出る。そしたらAさんは下手にはけて、次は下手から出る…みたいな、そういう演出の一部始終のことだ。感覚的なものも必要だし、場面によっては、そこに必然性があったりもする。舞台装置の出し入れも含まれるとすれば、その感覚の違いで、ダイナミックさが出せたり、しょぼかったりもするだろう。(そこまでを演出に委ねない場合もあるが、宝塚では最終的には演出家の裁量になっている。)「待って。確かこの辺に鳴子の縄が仕掛けてあるはずよ、注意して」鳴子とは何ぞや?通り道に縄を張り、引っ掛かると縄に括りつけられた木の板などが鳴って侵入者を知らせる原始的な警報機だ。現代だったら、レーザーを照射しておいて、遮られると警報機が鳴る、みたいな感じだろう。(「シークレット・ハンター」参照)しかし、ここはあくまでも原始的な“鳴子の縄”なので、誰かが通ったら大きな音がして侵入者を知らせる装置であるはず。とすれば、周辺に、大きな音がしたら聞き付けて、侵入者を捕える「人」が存在するはずなのだ。いくら大きな音でも、1キロ先まで聞こえるはずもないのだから。つまり、鳴子の縄は、引っ掛からずにスルーしてOKなのではなく、その周辺を素早く脱出して、味方の陣地か、誰も人のいないところに到着して初めて、「危なか…

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