カンパニーあれこれ(2)

「あれこれ」の(1)は、こちらです。なんか、まだまだ色々出てきてしまった… 原作では、高野悠(美弥るりか)は海外在住というのに、“ショートカットペア”(美人ランナーと美人トレーナーのコンビが珍しかったのか、鈴木舞(美園さくら)がマイマイ、瀬川由衣(海乃美月)がユイユイ、二人そろってショートカットペアといつの間にか言われるようになっていた。舞も由衣を“ユイユイ”と呼んでいる。)を知っていた。そして、マラソンランナーのトレーナーをやっていたキミにダンサーの何が分かるのという意味で、最初から由衣を「ユイユイ」と呼ぶ。あんな形で、プロジェクトMAIを解散し、今やリストラ対象になっている由衣には、ユイユイの名はつらいだけだ。からかうのをやめてからは、名前を呼ばれない日々…それが、ウィーンから帰国する時、「瀬川」と呼ばれる。その時の、原作の由衣の喜びを思うと、「由衣」と呼ばれて喜ぶのは、全然違う…と感じてしまう。 高野が突然ウィーンに戻ってしまった時、後を追って、由衣は一人、ウィーンに飛ぶ。原作の青柳誠一は、由衣が飛んでいる間も、日本で寝ずに様々な準備をしてくれる。由衣の宿泊先の手配、高野を説得できた時の帰りの便の手配、そして由衣が空港に降り立った時には、高野の住所とホテルのURLが由衣のスマホに送ってあった。何かあった時のために、有明F&Pの現地駐在員にも連絡してくれたり、さすが総務のベテラン…という細やかな対応。サラリーマンのカッコよさって、こういうとこじゃないかと思う。だから、由衣に同行して…

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「カンパニー」あれこれ

月組公演「カンパニー」、脚本へのバッシングが止まらない。主にネット上のつぶやきなので、黒髪の貴公子・高野悠(美弥るりか)のように悠々と構えていればいい気もするが、石田先生、無駄に叩かれているような気もして、ちょっと気になっている。 「カンパニー」は原作の小説がある。 書いたのは女性の作家・伊吹有喜だが、主人公の青柳が、奥さんに愛想尽かされた40代半ばのサラリーマンで、会社人間が多く登場するため、非常におっさんくさい雰囲気の作品である。実のところ、宝塚で上演すると決まった翌日に原作本を購入し、半分まで読んだが、そんなに面白くないな…と思って途中で投げ出してしまった。この手の話(サラリーマンの意に沿わぬ出向と、その先での奮闘記)なら、池井戸潤の方が数倍面白い。しかし、実際に上演されてからあらためて読むと、これがどういうわけか、数ヶ月放置されて発酵・醸造したかのように面白くなっているからビックリする。石田先生が物語の交通整理をしてくれたことで、紆余曲折する小説のポイントがハッキリしたのかもしれない。 でも、設定は、原作小説の方が全部味があってよかった、とは思う。というか、ストーリーは同じでも、キャラ設定が変わると、そのストーリに納得性が低くなる…というか。その辺が、塩梅っていうヤツかもしれない。 青柳誠二(珠城りょう)は、「バツ1の40代半ば、しがないサラリーマン」という設定(原作では誠一。バレエ団での愛称は、それゆえにイチさん)だったはずが、なぜか、妻に先立たれた若きイケメンになっていた。珠城が…

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ネモ船長に物申す!

「CAPTAIN NEMO」、青年館公演を観て、非常にもやもや。まだ、ドラマシティ公演が始まっていないので、ネタバレしたくないけど、もうとっても黙っていられないので、書かせてください。 知りたくない方は、以下の「続きを読む」は決してクリックしないでくださいね。  

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ヘアフォード家のみなさん

ヘアフォード家のメンバーとして紹介されるみなさん。マリア公爵夫人(桜咲彩花/仙名彩世)ジョン卿(芹香斗亜/瀬戸かずや)ジャッキー(柚香光/鳳月杏)ジェラルド(水美舞斗/芹香斗亜)バターズビー卿(高翔みず希)バターズビー夫人(花野じゅりあ)ジャスパー卿(夕霧らい)このうちジョン卿は「古いお友達」という扱いなので一家の人間ではない。しかし、関係性が紹介されない、バターズビー卿夫人は、「私達1ペニーだってもらえませんわ」と言っているところを見ると、血縁関係があるっぽい。ジャスパー卿は、まったく謎の存在だ。それにそもそも、この人たちの身分は、どうなってるのと突然気になり、海外版の舞台HPを探してみた。で、出てきたのがこちらのサイト。マリアはもちろん、ディーン公爵夫人。未亡人と思われる。Duchess of Deneと、定冠詞がついてない(The Duchess…じゃない)のは、もしかしたら、既に息子に嫁がいるのかもしれない。(その場合は、正式なディーン公爵夫人(定冠詞が付く)が、長男の嫁のものになるため。ただ、前公爵の妻は、死ぬまで公爵夫人を名乗ることができる。)でも、そしたら、ずいぶんなおばあちゃんなのではとも考えられるが、友人のTさまが、「後妻ということもある」と助け船を出してくれました。なるほどジョン卿は、Sir John Tremayneなので、準男爵かナイト爵。これじゃ、そもそも身分違いで、ヘアフォード伯爵令嬢(マリア)とは結婚できない。一族の人間なら、当然もっと上の身分のはずなので、伯爵家の果…

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別箱公演のフィナーレナンバー

宙組KAAT公演を観劇した。作品については、別途ゆっくりと感想を述べるとして、フィナーレ・ナンバーについて、感じたことがあったので、その話を書いておきたい。大劇場本公演は、組子全員が出演するし、ある程度「番手」に忠実な作りになる。まだ正確に序列が決まっていない生徒も学年順においしい役が振られるようになっている。ゆえに、逆になにかあったら「大抜擢」⇒「一気に下剋上」が確定することにもなる。別箱公演は、もう少し自由な設定ができて、過去にバウ主演している生徒を、別の生徒の主演公演の小さな役で使うこともあったりする。(『風の次郎吉』の柚香光など。)そういう時、一瞬、序列も逆転したように見えたりする。(『風の次郎吉』を例にとると、公演2番手としてポスターに載っていたのは、瀬戸かずやだった。)これはおそらく、別箱公演に関しては、主演以外の序列は意味がない、という定義が裏で動いているからなのだろう。ヒロインに関しても、トップコンビがそのまま別箱で主演しない限りは、かなり自由。主演者の相手役を模索するという動きが陰で動いていることはあるにせよ、ヒロインを演じたから、即トップ娘役候補になるなんてことは、決してない。ただし、今現在、その娘役が劇団にどう認識されているか、というバロメータは存在するんだな、と思った。それは、別箱公演のフィナーレ・ナンバーでの扱いだ。お芝居の中で、ヒロインではなかったけど、重要な役を演じた娘役。どんなポジションで、どんな衣装で、誰と踊っていたか。今回、ヒロインではないが重要な役を演じたのは…

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やっぱり気になる生田シェイクスピア

宙組東京公演「Shakespeare」、出演者の熱演もあって、素晴らしいという声しか聴こえてこない。私のような感想は少数派なんだろうと思いつつ、なんかなーという気持ちは晴れない。大劇場で観た時の、親子の確執だったり、夫婦の軋轢だったり…のややあっけない解消感は、出演者の演技が深まったことで、それほど気にならなくなったが、サブタイトル「空に満つるは、尽きせぬ言の葉」が、“ホントか”という印象を受けるところは、いまだ解消しない。だって、脚本が変わっていないんだから宝塚は、出演者ありきの舞台なので、脚本ありきで語るのは、あんまりメジャーな観劇法ではない。楽しかった、素晴らしかったという感想に水を差すつもりはさらさらなく、まあ、なんつーか、単なるシェイクスピアファンの愚痴なので、お気に召さなかったら、途中でUターンしてくださいませ。ウィリアム・シェイクスピアの人生を舞台化する―そんな壮大な夢をかなえられるとしたら、どんな脚本を書くだろうか?シェイクスピアの作品を劇中劇に入れたい!まず、そう考えるだろう。でも、劇中劇は、そんなにたくさん入らない。芝居の尺の問題もあるとなると、次に考えるのは、シェイクスピア作品の台詞をできるだけちりばめたい!ということになる。生田先生も、おそらくそういう思考を辿ったのじゃないかと思う。そういうわけで、本作品の中にも、著名なシェイクスピア作品の台詞やシチュエーションがちりばめられている。しかし、ここで、大きな問題が発生する。生田先生は、シェイクスピア作品が時を越え、400年後の…

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「Ernest in Love」で突然の執事萌え?

2015年1月に東京国際フォーラムホールCで上演された「Ernest in Love」が、梅田芸術劇場メインホールと中日劇場で再演されることとなった。上演場所は違うが、再演には違いない。こういう“間をあけての再演”の場合、主なキャストを入れ替えることで、観客の「また観ようかな」気分を醸成するという手法が取られるのだが、そもそも、この作品、主要人物以外の“主なキャスト”がほとんどない。そこで、伝家の宝刀“役替り”が導入された。2番手スター芹香斗亜が演じるアルジャノン役と彼の執事・レイン役を鳳月杏との役替りで、そしてサブヒロインとなるセシリー役を城妃美伶と音くり寿の役替りで。その他、物語のキーになるミス・プリズム役に花野じゅりあを持ってくるなど、キャストの入れ替えは思った以上に多かったが、新たに投入された出演者が作品をフレッシュに蘇らせた舞台となった。で、今回は、役替りで、アルジャノンとレインという大きな役を演じた鳳月から話を始めたい。昨年の上演時は、一応、花組生ではあったが、月組東京公演が終わったばかりで、アーネスト・次郎吉どちらのチームにも入っていなかった。そして、異動先の花組は、鳳月が入った公演から、2番手芹香、3番手柚香光…と、下級生がすでに番手スターをガッチリと務めることとなったと思ったら、突然バウ主演が飛び込んでくるなど、鳳月のジェンヌ人生どっちに転ぶ予定なのか、まったく予想がつかない。今回の2番手との役替り、そして、次のミーマイ・ジャッキー役、を考えると、本人の努力次第、運次第ということ…

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享保の改革

ケミ取り法から定免法への変更により、豊作だろうと凶作だろうと一定の年貢を納めることになった。これは幕府にとって、毎年の予算を一定に組めるという点において有効であるばかりか、お代官様の差配次第なケミ取りは賄賂の温床となり、結果、税が中間蓄財されてしまうという弊害にNOを突きつけたことも大きい。しかし、農民にとっては、この変更がよくなかった。お代官様への差配部分はさておくと、これは、定率から定額への変更である。三日月藩のような、土地の貧しい藩の農民は、もちろん、年貢を納めたら自分達の食べる米がない=餓死するしかない…という悲劇を産むが、もっと多くの米が取れる藩の農民も裕福にはなれなかった。農民が、年貢を納め、自分達が食べる分を確保したら、余った米はどうするか。売ることになる。年貢は、藩の武士たちの扶持(給料)になる。農民は、自給自足。残る工商身分の人々は、市場から米を買っていた。ケミ取り法時代は、豊作の時は年貢も多く取れるので、それらは藩の倉庫に納められ、凶作の時用に備蓄された。しかし、定免法となると、豊作でも一定量しか年貢に取られないので、残りの米が市場に出る。豊作だからといって工商の人々の人口が突然増えるわけではないので、当然、需要<供給…供給過多となった米の相場は下落するのだ。というわけで、定免法下では、すべての農民が等しく貧乏になってしまった…らしい。貧しい農民は、凶作でも年貢を納めるため、満足に食事ができない。裕福な農民は、豊作でも米が高く売れないので貯えが遺せない…江戸時代の三大改革は、こ…

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ロベスピエール

月組公演「1789」には、「ベルサイユのばら」にも登場する人物がたくさん出てくる。その一人に、ロベスピエール(珠城りょう)がいる。凪七瑠海が演じるカミーユ・デムーランは、「ベルサイユのばら」に登場する架空の人物、ベルナール・シャトレのモデルである、と作者が明言している。ロベスピエールとデムーランは、ルイ・ル・グラン学院の同級生だったと、「1789」でも語られている。それを聞いて、主人公のロナン(龍真咲)が、勝手にブルジョワと断定し、責めるのだが…そんなことない…ロベスピエールは貧乏だったはず…と、私は、ずっと、唇を噛んでいた。「ベルサイユのばら」において、ベルナールは、ロベスピエールをこう語っている。ちょっと長いが引用させていただく。ロベスピエールはな わずか6歳のとき 母に死に別れそしてすぐに 3人の妹や弟とともに 父親にさえ すてられて しまったんだいいか 6歳だぞ! わずか 6歳でロベスピエールは 親におきざりにされ……お…幼い妹や 弟といっしょに 世の中にほうりだされたんだあたたかい いたわりも 愛も……すべてを もぎとられてな!頭がよかったため 奨学金をうけて ルイ・ル・グラン学院に 入学した彼はいつも ひとりぽっちで…… ほかの子どものように 両親のやさしい 心づかいさえも うけられずすりきれた ぼろぼろの服を着て……お金もなく 外出もせずに……よろこびといえば 勉強だけだったはてしないほどの さびしさを 胸に満ちる涙をマクシミリアン・マリー・イジドル・ド・ロベスピエールの血は とりつ…

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電流の衝撃

その昔、クラッシュギャルズというスターがいた。ダンプ松本がバリバリのヒールだった頃、ベビーフェイスの大スターで、リングで歌も歌ったりしていた。(もう少し上の世代だと、ビューティー・ペアを思い浮かべていただけたらいいんではないかと…)最近、友人から、そのクラッシュギャルズの一人、長与千種の話を聞いた。ちこさん、今は何をしているのかなと思ったら、なんと、電流爆破マッチに出ていた普通プロレスのリングの周囲には3本ロープがめぐらされていて、このロープに相手を振って戻ってきたところをラリアートとか、まあ、そんな技が出てくるのが、普通のプロレス。しかし、電流爆破デスマッチは、そうではない。ロープの代わりに「有刺鉄線」がめぐらされている。しかも、その有刺鉄線に電流が流されている。触れたら電流が流れる。それだけじゃない。小型の爆薬があちこちに仕掛けられていて、そこに当たると爆発する。初めてこのタイプのプロレスを見た時、これは、素人でも痛みがわかるな、と思った。それだけじゃない。リングに近い席なら、爆風を感じる。火花が飛ぶ。痛みはひとごとではない。この電流爆破というスタイルを確立したのは、大仁田厚。その大仁田が、なんと長与を電流爆破の世界に呼び寄せたらしい。電流流すなんて、どこかの芝居の拷問かよ…と思ったけど、自ら電流爆破に挑む女もいるのね…ちなみに、試合のタイトル、正確には、“ノーロープ有刺鉄線電流爆破~爆破バット&電気イス四面楚歌地獄デスマッチ”だそうで。爆破バット以下は、想像できません…こちらに関係記事をリン…

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