「HEADS UP!」感想 その3

感想の「その2」はこちらです。自分がセリフを忘れたのに、プロンプしてくれた兵士役の付き人に逆上して刺してしまった名優・小山田丈太郎(今拓哉)。刺された方は倒れる芝居を始めるが、そこに新藤が声をかける。ここで死体に残られたら困るのだ。兵士はのけぞったところから、体勢を戻して、よろよろと袖に下がる。そして、「私を斬った!」と舞台監督・新藤(相葉裕樹)に訴える。お気持ちはわかります…舞台上では、小山田が、殿中でござる状態に、他の兵士達にはがいじめにされているが、運転手ながら役者不足から兵士をしている、四条(福永吉洋)が後ろからボコっと叩いた時に正気にかえり、兵を率いて上手に行進を始める。さっき靴を回収した兵士、そして小山田に斬られた兵士をその後ろに付くように袖から出して、場面は無事終了した。再び、解体作業に話は戻る。大砲のような大道具をバイトのスタッフ・佐野(入野自由)が受取り、運び始める。その重さを実感しながら、彼は思い出す。ここで時間が巻き戻り、まだ小山田が登場する。小山田は、シェネで回りながら登場するとか、いろいろ小技で笑わせてくれた。大砲に付いていた佐野だったが、必要な時になっても力が足りなくて舞台に押し出すことができない。見かねた演出部のベテラン・キュウさん(橋本じゅん)が佐野を突き飛ばし、大砲を舞台に出して引っ込んだその時、砲声と共に兵士が舞台に飛び込む。「見切れちまったら、裏方の恥なんだよ」と言ってのける姿に、佐野は、キュウさんを尊敬の目で眺める。…と、今度は、舞台上の小山田が、いきなり台…

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「HEADS UP!」感想 その2

続きです。「その1」はこちらをご覧ください。自分の舞台復帰の日に辞めるなんて…と不機嫌だった女優の真昼野ひかる(大空祐飛)は、「復帰の日だから、辞めるのを一日伸ばしたんじゃないですか」というまき(MINAMI)の言葉に、少し機嫌を直す。現場では、明かり合わせ(場面ごとに照明の具合を確認する作業)が行われている。照明プランナーの飯塚(陰山泰)は、高い位置で照明をいじっているスタッフを見ながら、「よくあんな高いところにのぼれるなー」と感心している。彼は高所恐怖症のため、若いうちに苦労してプランナーになり、今に至る。どうやら現在は「ドルガンチェ…」で一番古いスタッフらしい。そこへひかるが登場。気づいた飯塚に嫣然と挨拶を交わす。それに気づいた新藤(相葉裕樹)が「おはようございます」と最敬礼すると、ひかるも向き直って頭を下げる。舞台裏の上下関係がわかって面白い。舞台監督ってえらいのねと、制作の本庄まさこ(青木さやか)が現れ、連絡の行き違いを詫びる。どうやら、副制作の前田という人に前泊をやめた旨をひかる自身は伝えていたが、それがまさこには伝わっていなかったらしい。「ラインで連絡したなんて、そんな大事なこと、ラインで伝えるなってハナシですよ」と言うまさこに、やんわり、「でも、便利よ、ライン」と答えるひかる。あまり年齢に違いはないのだろうが、バリ芸能人のひかるの方が、新しいものに柔軟なのかもしれない。ヒロイン役の真昼野ひかるが登場したことで、スタッフは仕事を続けながらもそちらに視線を送っている。その中で、頑固なま…

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ミュージカル「HEADS UP!」観劇 その1

KAAT神奈川芸術劇場プロデュースミュージカル「HEADS UP!」脚本:倉持裕原案・作詞・演出:ラサール石井作曲・音楽監督:玉麻尚一振付:川崎悦子舞台美術:伊藤雅子照明:大石真一郎音響:木村実衣裳:牧野iwao純子ヘアメイク:宮内宏明歌唱指導:亜久里夏代アクション指導:野添義弘演出助手:藤原理恵舞台監督:酒井健プロダクション・マネージャー:山本園子技術監督:堀内真人栃木県のどこかの町の公共ホール「黎明会館」。老朽化に伴う取り壊しの決まったこの劇場で、ブロードウェイミュージカル「ドルガンチェの馬」1001回公演が行われるという。1000回公演をもって公演終了、主演の名優・小山田丈太郎(今拓哉)は引退…したはずが、小山田が1001回目を黎明会館で行いたいと言い出したため、急遽公演が決まった。当然、キャストのスケジュールは押さえていない、スタッフも解散、装置も解体…それでもどうにか体裁を整え、1001回目、本当の大千秋楽公演が開催される日の早朝から芝居は始まる。序曲のあと、まず、客席から、会館の雑用係兼この芝居のMC的存在の熊川義男(中川晃教)が登場し、客席を笑わせながら、芝居の世界に引き込む。髪形が爆発していない中川を初めて見たので、「あっきー…だよね?」と二度見してしまった。身綺麗に刈りそろえられた髪、スーツのズボンに白Yシャツ、その上から作業着みたいなウィンドブレーカー姿の中川は、本当に劇場の係の人に見える。で、中川のMCにより、舞台のマジックを説明する…という体でミュージカルシーンが展開される…

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「HEADS UP!」初日

大劇場の月組も初日ですが、私はKAATにいました。HEADS UP!楽しい作品です。劇場が大好きな皆さん、ぜひ、劇場へ!ラストは、クリエで観られなかったあの光景が登場しますよ。ゆうひさんがお姫様抱っこされるのは、現役中に見てるから、まったく衝撃もなく。とにかく可愛い女性です。お楽しみに。

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「SING&TALK」大阪編

「SING&TALK 大阪」に行ってきましたまず、お料理を紹介しますね。ウェスティン大阪は、DSとかでも行ったことがなく、今回、初めて。『食前にフレッシュフルーツとオリーブオイルのジュースをどうぞ』冷製のスープかと思ったら…という意外性ライトの位置関係で、微妙に影が入っているんですが、お許しください。『マリネサーモンとフレッシュハーブ&ベジタブル バルサミコヴィネグレット』前菜。バルサミコソースが好きなので、さくさくいただいちゃいましたが、草食べてるような感覚もありーの、サーモンとか、トマトとかの感覚もありーの…と、アドベンチャーな美味しさでした『真鯛 帆立貝のソテー キヌアのリゾット添え ブイヤベース仕立て』真鯛は、すっきり。帆立貝はこってり。素敵なマリアージュでした『牛フィレ肉グリル 南瓜のグラタン添え グリーンペッパーソース』お肉は、若干とろみのあるソースが美味しく、上部に見える南瓜の型押しみたいなのが、絶品でした『ローズの香るチェリーとショコラムース ヴァニラアイスクリーム添え』お腹いっぱいだったのに、一瞬でしたねショーの方は、楽しかったです。ギターの弾き語りもずいぶんお上手になられて。きっと、この曲、お気に入りなのね、と思いました。客席はとても豪華。退団した桜一花ちゃん、大海亜呼ちゃんや、現役生もいっぱい来てました。トークは音楽の和田さんも一緒に、ぐだぐだ楽しかったです。次の舞台も楽しみ!SET LISTFinger(ego wrappin’)My Blue HeavenEngl…

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真夏のトーク&ライブ(ステージ編)

それでは、あらためて、祐飛さんの「SING&TALK SHOW」、食事が終わった後のステージ編のリポートです。ステージが始まるまでの間、客席にはピアノの音が流れている。キース・ジャレットのピアノコンサート『ケルン・コンサート』。あ、でも、これは祐飛さんが教えてくれたので、あ、そうだったんだと思っただけで、食事中はまったく気づいていなかったです。BGMが止んだ後、まず、ステージに現れたのは、ウクレレを手にした江畑コーヘーさんと、ウッドベースを抱えた岩永真奈さん。そして、祐飛さんが登場。祐飛さんは、ステージ上のスツールに腰掛けて歌い始める。私が見た回は、黒いスリップドレスに黒い網ガラタイツ、サンダル、そして黒地にカラフルな色の入ったストールを羽織っていた。まずは、しっとりと、ego wrappin’の『Finger』。そして、簡単に自己紹介をすると、『My Blue Heaven』へ。「私のオオゾラ」として、テーマ的に使っている曲だけど、今回は、すべて英語で。伴奏が簡素だったこともあって、手拍子するべきか…と躊躇があって、結局、黙って見守ることに…(笑)次は、『Englishman in New York』。これも英語で。サビのところは、祐飛さん、マイクの近くで、シャカシャカ音がするものを振ってました小さいマラカスかなここから、トークタイム。最初に、ここまでの3曲を紹介した後、演奏者の二人を紹介。二人は、1年前の「La Vie」でも演奏を担当をしてくれた方達とのこと。岩永さんが持っているベース…

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真夏のトーク&ライブ(食事編)

「大空祐飛SING & TALK SHOW」に行ってきました。まだ、全会場の公演が終わっていないので、とりあえず、お食事編をアップしたいと思います。まずは、和田倉噴水公園から、パレスホテルを臨む写真。あまりにも暑い日だったので、今回は、和田倉噴水公園の中を通って、パレスホテルの車寄せからホテルに入りました。この噴水の飛沫を浴びたら、本当に涼しかったです。写真だけでも、涼しさが伝わる感じですね。そして会場へ。ちょっと逆光だったので、加工してみましたが、ファンクラブからのお花。なんか、いつも素敵なお花が飾られていて、センスよいな~BGMは、ピアノ曲。後に祐飛さんがトークで明かしたところによると、この選曲も祐飛さん自身。キース・ジャレットのライブCD「ケルン・コンサート」が流れていたとか…ぜーんぜん、聴いてませんでしたが、一応、この選曲で私たちを暗示にかけていたらしいですサブリミナル的な…スコットランド産サーモン ミル貝 クリーム仕立てのカリフラワー キャビア添え祐飛さんが退団する時のDSが、このパレスホテルだったわけですが…その時以来のパレスでの食事。3年ぶりあの時は、味とか、よく覚えてない…というか、おいしいと思わなかったけど、(豪華フランス料理を続けて3食食べたら、さすがにおいしさも感じないわな…)今回は、とても美味しいです鱸(すずき)のヴァプール ニース風コンディメント レモンのコンフィとハーブのエミュルジョンクリームの重さをレモンが中和する感じで、お野菜のさくさく感もあって、とてもおい…

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「TABU」感想 その4

「その3」はこちらです。一応、ストーリーについては「その3」までで終わったので、ここからは、語り切れなかった部分と出演者感想を書いていきたい。エッシュブルクのナレーションにこんな部分がある。服役中の犯罪者の顔写真をたくさん重ね合わせていったら、「犯罪者の顔の特徴」みたいなものが出てくるのではという仮説に基づいて、それを実行した人がいたらしい。現実に。で、その結果は…特徴などなく、むしろ、「美しかった」とか。たくさんの人物の顔写真をランダムに重ねていくと、「個性」が埋没してのっぺりしてくる。けれど、たとえば、15人兄弟の写真を重ねたりすれば、その家族の特徴が如実に出てくると思う。「美しかった」ということは、「犯罪者の顔」に特徴はなかったということだ。それは、即ち、犯罪者と一般人の間に境界はないということ。それも、この作品の…というよりは、シーラッハ作品のテーマの一つのような気がする。あと、たしか、芝居の中には出てこなかったけど、原作では、ゼバスチャンは、「忘れることができない」体質だった。これも、けっこう辛いだろうなぁ…他人が忘れたことを一人だけ覚えているとか…そん様々な要素が絡み合い、フクザツな性格になってしまったゼバスチャン。とはいえ、彼がしたことは何だったのだろう事件をでっちあげ、警察と裁判所を巻き込み、そんな状況込みでゲージツ家エッシュブルクの新作って…それでいいのか(舞台では使用されなかった単語“インスタグラム”は、背景込みの芸術作品という意味だそうで…たとえば、作品を展示する場所の風景と…

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「TABU」感想 その3

祐飛さんの出演した舞台「TABU」の感想、その3です。その2は、こちらをご覧ください。いよいよ公判。ドイツの裁判では、裁判官だけでなく、検事も弁護人も黒いローブのようなものを羽織るらしい。今回の裁判は、被告人が有名な写真家ということもあって、マスコミが注目している。出廷前に、さっそくテレビの取材を受けたという、モニカ・ランダウ検事(宮本裕子)は、上質な素材のローブを纏って登場。コンラート・ビーグラー弁護士(橋爪功)は、かなりくたびれたローブ姿。今回の裁判では、被告の自白に証拠能力があるか、という点がまず争われる。証人として、ヘルマン・シュッツ刑事(池下重大)が出廷するが、彼に対してヨーナス・マイヤー裁判長(佐藤誓)は、被告・ゼバスチャン・フォン・エッシュブルクの取り調べを行ったという事実関係さえ、述べる必要はないと言う。そして、「黙秘します」と言ったシュッツ刑事に対して、ビーグラーの尋問が始まる。その方法が秀逸だった。この事件の取材合戦はものすごかったらしく、シュッツ刑事に対しても、“エッシュブルクに拷問した刑事”としてインタビューがなされていた。実際に被疑者に拷問をした場合、処罰の対象にもなりかねないから、シュッツも、事実関係については認めていない。しかし、彼は、彼の思いをマスコミに伝えていた。そこにビーグラーは賭ける。「もし、ベルリンに核爆弾をしかけたテロリストが逮捕されて、彼がその場所を明かさないとしたら、市民たちの命を守るためには拷問も辞さない」と、シュッツは語っていた。あくまでも仮定の話…

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「TABU」感想 その2

その1はこちらです。ところ変わって、裁判長、ヨーナス・マイヤー(佐藤誓)のオフィス。裁判長が笑いのタネを仕掛けまくっている。けっこう頭の体操的な舞台なので、このシーンはよい息抜き。でもちゃんと、ここで重要な問題も取扱われている。息抜きしすぎちゃいけません。ここで、どっかんどっかん笑いが起きるのだが、大人しい東京がキャパの少ない濃密な空間、ノリのいい関西がけっこう大きい会場だったので、関西の笑いのエネルギーには驚いた。裁判を始める前に、裁判長、検事、弁護人が事前にすり合わせを行う、という場面。不倫騒動で出世の道を断たれたという噂の裁判長が差し出す「妻のつくったクッキー」に対する弁護人、コンラート・ビーグラー(橋爪功)と、婉曲ながらきっぱりと拒否する、検事、モニカ・ランダウ(宮本裕子)。そして、裁判長が発する「私のオフィスです」という台詞だけで、これだけの場面が作れるんだな~と、役者の力量に感嘆。ここで問題となるのは、拷問を示唆した上で採られた自白調書の取扱い。弁護人としては、最初からこんなものを証拠採用するなんてありえない、という方針。検事としては、それも含めて裁判で決着を着けるという方針。真っ向から対立するが、裁判長が裁判での決着を宣言する。怒っているビーグラーだが、実際、彼がこの事件を担当しようとしたのは、拷問の一件のためだ。拷問について自説を披露するなら、裁判でこの件を争わなければならない。だから、本当は、これ、彼の思うツボなのだ。そういう状況下で怒って見せるから、モニカから「芝居がかっている…

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