「ワイルド・グレイ」観劇

ミュージカル
「ワイルド・グレイ」

脚本:イ・ジヒョン
音楽:イ・ボムジェ
翻訳:石川樹里
演出・上演台本・訳詞:根本宗子
訳詞:保科由里子
音楽監督:竹内聡
美術:山本貴愛
照明:佐藤啓
音響:原田耕児
衣裳:田中大資
ヘアメイク:高村マドカ
振付:宮河愛一郎
歌唱指導:益田トッポ
稽古ピアノ:中條純子
演出助手:加藤由紀子、井口綾子
舞台監督:幸光順平
主催:ホリプロ、ローソンチケット
企画制作:ホリプロ

出演者が少なく、音楽もシンプルな楽器編成で行われる、小劇場ミュージカル、しかも韓ミュとなると、「スリル・ミー」が浮かぶが、本作も同性愛の関係性がテーマになっている。
登場人物は3人。詩人・作家・劇作家のオスカー・ワイルド(立石俊樹)とロバート・ロス(福士誠治)、そしてアルフレッド・ダグラス(東島京)という実在の人物同士の関係性がピアノとヴァイオリンとチェロの伴奏で美しい音楽を奏でていく。※

オスカー・ワイルドといえば、お子様には「幸福の王子」、文学少女には「ドリアン・グレイの肖像」、そして宝塚ファンには「Ernest in Love」の原作「真面目が肝心」の作者として有名だが、彼はまた、世紀末ロンドンの社交界を騒がせた、同性愛者としても有名だったりする。
ここで特筆したいのは、ワイルドが生きていた時代のイギリスでは、同性愛行為は、厳格に「犯罪」だったということ。もちろん密室の秘め事なので、バレなければ、問題はないのだが、ごくまれに、訴えられることが起きると、投獄は免れない。
ワイルドには妻子もおり、ほかにも積極的に女性の恋人を持ったことがあるため、同性愛者というよりは、両性愛者と考えられている。

本作では、ワイルドの現代でいうところのマネージャー的な立場にいるロバート・ロスが、ワイルドの死後、ワイルドの恋人だったアルフレッドに会うところから始まる。史実では、ロバートとアルフレッドは1歳しか年が違わず、二人から見るとワイルドは15、6歳年上のオジサンということになるのだが、本作は、ロバートはワイルドと同年代のように見えるし、そういう演出効果を狙っているところもあるので、そこはフィクションとして受け入れる部分なのだろう。
ロスは常識人だが、ワイルドもアルフレッドも感情先行型というか、情緒不安定で、二人の恋愛にロスは振り回される。それが、元の恋人という関係性なのだから、ロスには同情しかない。振り回し、振り回され、結局、ワイルドは投獄され、心身ともにボロボロになってしまう。そんなオスカー・ワイルド=立石俊樹は、耽美の極みだったし、東島京もまさに美青年‼福士誠治は、ロスの常識人の部分が似合っていて、なかなか、よき配役だったと思う。
音楽も美しく、特に立石の甘い歌声は、曲調にとても合っていたと思う。さらにブラッシュアップしての再演を願う。

※平間壮一(ロス)、廣瀬友祐(ワイルド)、福山康平(アルフレッド)のチームとのWキャストでの上演。

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