新国立劇場小劇場で上演されている「デカローグ」(「十戒」をテーマにした10の小作品)、コンプリート目指してまず「1~4」を観劇した。
「デカローグ 1~4」
原作:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
美術:針生康
映像:栗山聡之
照明:松本大介
音楽:阿部海太郎
音響:加藤温
衣裳:前田文子
ヘアメイク:鎌田直樹
舞台監督:濵野貴彦、清水浩志
総合舞台監督:齋藤英明
「デカローグ1・ある運命に関する物語」
「デカローグ3・あるクリスマス・イヴに関する物語」
演出:小川絵梨子
演出助手:長町多寿子
「1」
<キャスト>
クシシュトフ…ノゾエ征爾
パヴェウ…石井舜
イレナ…高橋惠子
オラ…木下希羽、宮下楽七(交互出演)
エヴァ・イェジェルスカ…浅野令子
隣人の夫婦…鈴木勝大、森川由樹
近所の住人…チョウヨンホ
ヤツェク…関大輝、片岡蒼哉(交互出演)
男…亀田佳明
原作となる短編連作映画は1988年製作。
第1話には、パーソナルコンピュータが登場する。私の弟が当時珍しかったパソコンを買ってもらったのが、1980年前後だったと思うので、ブラウン管のテレビモニターや、そこに映し出される意味不明の英字と数字の羅列…はリアルタイムで見ていたそれと同じで懐かしかった。
当時のパソコンは、プログラミングができないと使えないが、プログラミングは数式と簡単な英単語から成り立っているので、勉強すれば子供でも操ることができる。主人公、クシシュトフ(ノゾエ)の息子、パヴェウ(石井)は、父の理論通りにプログラムを組み立て、湖の氷がいつスケートできるレベルまで凍るのかを測っていた。
クシシュトフは無神論者で、熱心なクリスチャンの姉(高橋)とはその点、意見が合わなかったが、姉はパヴェウのことはとてもかわいがってくれていた。
コンピュータが氷の厚みが盤石であると太鼓判を押した日、湖の氷が割れて子供が溺れた、とサイレンが鳴る。パヴェウの死が動かし難い事実であると知るまで、いや、そのあとも、クシシュトフは、「神よ」と叫び続けた。
「神様」と口にすることは私もよくある。
神とは、その宗教に祀られている偶像のことではなく、もっと根源的な、人知を超えたなにか、の象徴であり、みだりにその名を口にしないと「十戒」にあったとしても、その名を口にしなければ、耐え切れないことが、人生にはあるー第1話から、やりきれない物語だった。
「3」
<キャスト>
ヤヌシュ…千葉哲也
エヴァ…小島聖
酔っぱらいの男性…鈴木勝大
アントシ…関大輝、片岡蒼哉(交互出演)
クシシュトフ…ノゾエ征爾
ヤヌシュの妻…浅野令子
カシャ…木下希羽、宮下楽七(交互出演)
当直医…チョウヨンホ、鈴木勝弘大、森川由樹
警官…鈴木勝大、チョウヨンホ
受付(声)…森川由樹
看守…チョウヨンホ
駅員…森川由樹
男…亀田佳明
クシシュトフ(ノゾエ)がこの話にも登場するが、デカローグの全作品は、その主な登場人物が同じアパート(マンション)の住人という設定になっている。
さて、あるクリスマス・イヴ。タクシー運転手のヤヌシュ(千葉)がサンタクロースに扮して子供たちを楽しませ、さあこれから夫婦でワインを…みたいなところに、突然、昔の恋人、エヴァ(小島)が現れ、失踪した夫を探してほしいと言い出す。断りきれずに深夜の街に車を走らせるヤヌシュだったが…
ヤヌシュは真剣にエヴァの夫を探しているが、エヴァはそれが無駄なことを知っている。観客は、おそらく途中からエヴァの狂言を疑いながら見ていたと思う。そして、私は、よくドラマなどに出てくるこの手の「女心」とか言われているやつがまったく理解できないので、途中から醒めて眺めていた。
おろおろする千葉哲也は可愛く、小島聖は存在そのものが美しい。
「デカローグ2・ある選択に関する物語」
「デカローグ4・ある父と娘に関する物語」
演出:上村聡史
演出助手:西祐子、中嶋彩乃
「2」
<キャスト>
医長:益岡徹
ドロタ:前田亜季
アンジェイ:坂本慶介
ヤネク:近藤隼
看護師:松田佳央理
婦人科医:近藤隼
男:亀田佳明
ある病院に入院しているアンジェイと、その病院の医長は、同じアパート(マンション)に住んでいた。
交響楽団でヴァイオリニストをしているという妻のドロタは、夫が死ぬのなら、いつ死ぬのか教えてほしいと、医長に詰め寄る。あまりにしつこいので、面談の予約をしてみると…ドロタは妊娠しており、夫の子供ではないのだという。夫が早晩死ぬのであれば、これが最後のチャンスなので子供を産みたいというドロタの願いは、虫がいいのだろうか
実際、アンジェイがどうなるかは医長にもわからないから答えようがない。そして、アンジェイは奇跡的に回復し、ドロタは子供を産む決断をするのだが、なんとも「セラヴィ」(これが人生)な物語だった。
「4」
<キャスト>
ミハウ:近藤芳正
アンカ:夏子
医長:益岡徹
母:松田佳央理
眼科医/教授:近藤隼
ヤレク:坂本慶介
男:亀田佳明
アンカは父と二人暮らし。ある日、父親が書いた「死後開封のこと」と書かれた手紙を見つけてしまう。
実は、父のミハウは、アンカが自分の娘ではないことに薄々気づいていて、成長する娘に、恋心に似た思いを抱いては、自分を戒めている。
一方、アンカは父親に対して、娘が父親に抱く以上の強い愛情を抱いていて…ミハウが書いた手紙は、そんな二人の生活に一石を投じることになるのだが…
ぶっちゃけ、こういう話は、キモい。
父親が娘に向ける愛情が、血が繋がっていないというだけで、別の関係性に変わるというのが、どう考えてもキモい以外の感想が持てない。なので、「以上終了」としか…
近藤さんは、とても可愛いパパでした
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