ミュージカル
「ファントム」
脚本:アーサー・コピット
作詞・作曲:モーリー・イェストン
原作:ガストン・ルルー「オペラ座の怪人」より
演出:城田優
美術・衣裳:トム・ロジャース
翻訳・通訳:伊藤美代子
訳詞:高橋亜子
音楽監督:森亮平
照明:吉枝康幸
音響:山本浩一、宮脇奈津子
映像:西田淳
振付:新海絵理子
ヘアメイク:馮啓孝
特殊メイク:ニール・マーツ
アクション:幸村吉也
指揮:森亮平、湯川紘惠
歌唱指導:西野誠、平岡由香
稽古ピアノ:太田裕子
オーケストラコーディネート:新音楽協会/安達くるみ、楠理名
「ファントム」は宝塚で何度も観劇しているものの、外部での公演はこれまで観てこなかった。今回、真彩希帆ちゃんがクリスティーヌを演じることになったので、外部でも観てみる気持ちになった。
結果…
素晴らしかった
もう、次から、宝塚の演出も城田“先生”にお願いしたいくらい
宝塚版の意味不明な部分が全部クリアになっていた。やはり、自分が俳優として出演もしている城田ゆえに、小さな綻びも丁寧に修復して、納得性の高い「ファントム」を再構築していた。
もしかして…宝塚版は演出に問題があっただけ…
舞台は、パリの街角から始まる。
パリの人々が、三々五々舞台に登場し、平和な日常を演じている。そんな中、開演前の諸注意アナウンスが流れ、パリの人々に扮したアンサンブルさんが、店先からスマホに×をつけた絵を客席に提示する。自然。人々の中に、果物でジャグリングを始める人が出てきて、いつの間にか、舞台と客席がひとつになって応援し、客席が温まっていく。自然に客席を温めていく、素敵なやり方だな、と感じた。
客席が温まったところで、舞台は一転、「ファントム」の世界に包まれていく。
音楽・照明…こんな風に一気に観客の心を舞台に引き付けてしまうものなのか。まだ、主役が登場していないのに。城田優、天才か…
我らが真彩ちゃんは、メロディ・メロディ
と軽やかに歌って、一瞬で空気を変える。そりゃ、シャンドン伯爵じゃなくてもスカウトしちゃうわ。ちなみにシャンドン伯爵は、下手前方の扉から入ってきて、その辺りに溜まっていて、お近くに座っていた私、すごく眼福でした
さて、「ファントム」という作品、というか、宝塚版の私が思う、納得できない点は、次の通り。冒頭からファントム(素顔)が銀橋を渡る。いや、たしかに、ちょっとグロいメイクではあるが、叫び出すほどのものではない。私(一般観客)が耐えられるのに、恋人であるクリスティーヌが絶叫して逃げ出すってどういうこと
クリスティーヌの心の動きが丁寧に描かれないので、二股にしか見えない
ファントムが死ぬところで、クリスティーヌが仮面を脱がせる場面が出てくる。死ぬ間際でもクリスティーヌに顔を見られることに恐れを抱くファントム。それでも仮面を脱がせるのは、クリスティーヌの自己満足じゃないかという気がして…
従者、なんでファントムに従ってるの
トート閣下と黒天使のような関係性に見えるが、そもそもそれっておかしくない
この辺、ものすごく納得できるように作られているのが、すごく良かった。クリスティーヌのシャンドンへの思い、そしてエリックへの思いが、ちゃんと繋がっていて…ここまで繊細にヒロインの心情を描き出す城田優、天才通り越して怖い…ここまで女心に精通しているとは…
城田優は騙せないな…そんな機会はないが
仮面が精巧に作られていて、見栄えが素晴らしいし、照明の力なども借りて、ファントム(エリック)の素顔を見せないようにしているのも、よかった。先行作である「オペラ座の怪人」では、怪人が居室などでは、ずっと素顔をさらしていることと、宝塚でトップスターがずっと仮面を付けているのが無理…という諸般の事情により、ファントムの顔は「出ているもの」と考えがちだが、そんなことはないんだよね。
(スタジオライフの「PHANTOM-Untold Story-」では、ファントムの顔は一切出てこない)
なにより、真彩の天使の歌声がとっても素敵で
ファントムの母親である、歌姫ベラドーヴァもクリスティーヌ役者が演じることで、いろいろな部分がとても自然に受け止められ、これも真彩でベスト「ファントム」を観られてよかったと思った部分。(これは、宝塚版では難しい部分もある。ミュージカル1本物は通し役が少ないので…)
Wキャストのもう一人の方が降板してしまい、真彩ちゃんのシングルキャストになってしまったが、疲労も見せず、クリスティーヌとベラドーヴァを歌い続けてくれ、大満足でした
チケットは3公演申し込んだうちの2公演しか当たらなかったため、ファントムは加藤和樹、カルロッタは石田ニコルのものしか観られず、(シャンドン伯爵だけは、大野拓朗&城田優両方観劇)ちょっと残念だったが、どのキャストも素晴らしく、解釈違いの一切ない、最高の公演だった。
エリックのキャラクターも、ちょっと幼児性の抜けない部分が解釈通りで、加藤和樹の地団駄がめちゃくちゃツボでした
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