「#これで恋ができるなら」観劇

「#これで恋ができるなら」


作・演出:相馬あこ


舞台監督:今泉馨
照明:奥村典洋(ALLEX)
美術:多賀慧
演出助手:藤田晋之介(100点un・チョイス!)
演出部・主題歌:渡部真也(100点un・チョイス!)
宣伝美術:大沢寿恵(citrolemon)
スチール撮影:千賀健史
記録撮影:TWO-FACE
宣伝メイク:藤原萌
パンフレットデザイン:太田明日香
制作補佐:上畑みさと
制作統括:松本匡平(100点un・チョイス!)
企画・制作:#これで恋ができるなら製作委員会(演劇ユニット100点un・チョイス!/オフィスインベーダー)


とある山のペンション。
一人の老女(加倉恵子)が佇んでいると、彼女が気づかない間に、一人の青年(定本楓馬)が後ろを横切る。
次の場面では、一人の若い女性(伊藤寧々)が、何かにとても悩んでいる。そこへ、先ほどの老女が登場する。女性は、屈託なく、自分の小説のネタ探しに付き合ってほしいと言い、老女にいろいろ尋ねる。老女は、自身の話ではなく、自分が見聞きした話…として、女性にひとつの物語を聞かせるー
次の場面からが、本題と思われる。同じペンションに、「#恋をしたら100万円」というメールでおびき出された男女が集まり始めている。
全員がメールで呼ばれたわけではなく、枝沼要(三浦海里)に呼ばれてやって来た友人が3人いる。しかし、その友人たちは、参加者の一人、万田剛(定本楓馬)の姿を見ると、全員が動揺する。剛を問い詰める伊藤海斗(小西成弥)、驚いて声も出ない岡宮由梨(瑞季)、そんな由梨を見て激昂する寺芝早希(古賀成美)の姿は、他の参加者をあわてさせるほど。結局、海斗・早希・由梨の3人は、この企画に参加しないと決め、別室へ引きこもる。
どうやら、半年前、剛は突然失踪し、恋人だった由梨は、そのショックから立ち直れずにいた。そんな剛が、「#恋をしたら100万円」企画の場に現れるというのは、どういうことなのか[exclamation&question]
ほかにも、元夫婦の鹿沼一輝(すがおゆうじ)と村岸千代子(神谷敷樹麗/相馬あこ)が参加した相手を見て、驚く…という事態もあるが、その他のメンバーは、特に面識はないようだった。白杉文太(千田京平)は、チャラいYouTuber。佃茜(花奈澪)は、口数は少ないが意思が強そう。若宮芽衣(村田寛奈)は、メイドカフェのような店で働いていて、物おじせず、初対面の人にも普通に話しかけている。安藤誠(清水拓蔵)は、一人、50代くらいなのに、なぜか参加している。100万円が欲しい年齢にも思えないが…。千田勘平(中尾太一)は、おタクを絵に描いたような青年。リア充への道を切り開くつもりなのか…。持田千尋(藤井凛華/和田みなみ)は、女子高生。いいのか、家族は知っているのか[exclamation&question]
だいたいの設定が理解できた辺りで、物語は、剛・要・海斗・早希・由梨の大学時代へと遡る。
このメンバーで、このペンションに来たことがあったらしい。その幸せな時代の物語を見せながら、剛と由梨がいかに純愛を育んでいたか、とか、この時から海斗は、由梨への報われぬ想いに身を焼いていたのか…とか、要と早希は、恋人はいないものの、付き合うつもりはないらしい…など、いろいろな事情が見えてくる。(海斗の気持ちは、剛も知っているらしいが、由梨は、ずっと知らないまま…ってことはないよね…)
現代に戻ってきて、口数も少なく、食欲もない茜が、突然吐血する。
看護師経験のある千代子がすぐに対応し、救急車を呼ぼうとするが、本人が強くいやがり、また、元夫の鹿沼も、本人がいやがっているから…と、千代子を責める。その時、なんとなく、茜を部屋で休ませ、事態をおさめたいメンバーと、心配して救急車を呼んだ方がいいというメンバーに、きっちり二分されていることがわかる。
おちゃらけていた文太が、真剣に心配し、我慢しちゃダメだ、僕の姉ちゃんはそれで死んだんだ、と言い出すが、それでも、救急車が呼ばれることはなかった。
この辺で、なんとなく事情が読めてきたな…という気がしたところで、種明かしが始まる。
少し前のある日、剛は、このペンションに要を呼び出し、安藤、鹿沼、千田、茜に紹介する。そして、なぜ自分が半年間失踪していたかを話す。がんで余命がわずかであること、そんな自分の最期を由梨に知らせたくないこと、でも、由梨にはもう一度恋ができるようになってほしいこと、それを頼みたいから、海斗と早希に会いたいというのが、彼の希望だった。安藤は、娘の千尋に会いたいと、鹿沼は元妻の千代子に会いたいと、千田はよく通ったメイドカフェの芽衣ちゃんに会いたいと願う。そして、茜は…どうしても謝りたい人に会いたいと言った。そんな彼らの願いを叶えるため、会いたい人を、目的を知らせずにここに招待してほしいと。
「#恋をしたら100万円」という、安藤たちの安直な企画がそのまま実行されたのは、要も了承したものの、積極的ではなかったからか。
また、現在に戻って、要が剛のためにあれこれ手伝っているらしいことについて、海斗の怒りが爆発、剛はこれ以上隠しておけば、要に害が及ぶと判断して、海斗にも真実を告げ、別途、早希にも真実を話す。(由梨には言わない)
翌朝、体調が思わしくない茜と安藤が帰ることになり、剛も、千田や鹿沼も一緒に帰ることにする。
既に、安藤は千尋と話をすることができ、千田は芽衣に客としての自分のことを思い出してもらえた。鹿沼は千代子との漫才のような会話をずっと続けてこれた。思い残すことはなくなったのだ。
では、茜は[exclamation&question]あとは文太しか残っていないが…。
と、突然、茜が文太に告白する。自分は、文太の姉の友人で、「あの日」姉を呼び出して、お酒を飲ませ、具合が悪くなった彼女を「大丈夫」という本人の言葉を信じて、残して帰宅してしまった、と。号泣して、膝をつき、謝る茜。あまりの激しさに、驚く文太だったが、気にしないで、姉の分もあなたの人生を生きてください、と続ける文太。
その向こうから、冒頭の若い女性(端折ってしまったけど、休憩前とか、時々、外枠側の芝居をしてくれていた)が、文太の姉、鈴として、茜に声をかける。「あなたのせいじゃない。でも、あなたがそのうち、こっちに来たら、また、前みたいに話そうね」と。
それから、また時が経って…由梨もようやく真実(=剛の死)を知ることとなって。彼女は、ずっとずっと剛を思い続けていたらしく、あのペンションで、とうとう最終手段の手紙が渡される。ペンションの案内看板の裏側に、剛からの最後のメッセージが記されていた。
感謝と愛とそして、また恋をしてほしいという剛の願いー
若い女性が、鈴本人だった(=もう死んでいる)こと、老女が、実は未来からタイムスリップしてきた由梨であることが、最後に、ふんわりと明かされ、物語は終わる。あ、最初の方で、鈴に聞かれて、結婚したこと、だんなさんとは純愛だったこと、を語っていたっけ。そっか、ちゃんと、あの後、恋をしたんだね…[exclamation×2]
(Wキャストは、観劇した時のキャストを太字にしています)


恋の終わりが、唐突だったことはありますか[exclamation&question]


脚本を担当した相馬あこさんは、大学時代に付き合っていた彼がいきなり音信不通になり、その時、いったい何があったの[exclamation&question]と思う中、もしかしたら、この物語のようなことなんじゃないか、と妄想したこともあったとか。
(その後、無事に再会した時は、恨むより「生きててよかった」と思ったんだとか。なんか、めっちゃ、いい人だな、と思う。)
別れを告げるということは、告げられた相手の動揺や怒りや悲しみを受け止めなければいけないことで、それもまた、つらいことではありますよね。ほかに好きな人ができたとか、つらさを乗り越えるモチベーションがあればまだしも、この芝居のように、病気になったとか、破産したとか、犯罪を犯したとか、一緒にいたら相手を不幸にしてしまうような理由の場合、つらさのWパンチ[爆弾]
(一緒に頑張りたいとか言われるから、絶対に本当のことは言えないし…)
もちろん、最期まで一緒にいてほしい、という考え方もあると思うし、由梨の立場だったら、その方が幸せだろうし、その方が、次の恋にも行きやすい気はする。(やるだけのことはやった[ダッシュ(走り出すさま)]みたいな…ね[ひらめき])でも、愛する人にそこまでの覚悟をさせられるか…というと、若ければ、若いほど、その勇気は持てないだろうな。


アフタートークやパンフレットによると、テーマの重さのせいで、明るい稽古場ではなかったようだけど、一人一人が深くテーマを考えて作品を作っていったんだな…ということが伝わる公演だったと思う。
以下、箇条書きで、感想を書いていきます。
[ひらめき]脚本については、伏線と回収が鮮やかで、どの登場人物についても、もやもやすることがなかった、ということを評価したい[ぴかぴか(新しい)]
[ひらめき]また、登場人物のリア充度が低いというか、だれもかれも恋愛にベクトルが向いていないというのが、私としては心地よかった[黒ハート]勘平のように、メイドカフェの子とお話しするだけで幸せな人だったり、茜のように、心残りに恋愛的要素がまったくない人だったりが、普通に出てくる。要と早希は、お互い言いたいことを言い合ってるけど、実は好き同士…ということもなく、男女5人でも、付き合うもあり、片思いもあり、なんにもないもあり…というのが、現実的だな…と思う[わーい(嬉しい顔)]
[ひらめき]男女5人で、中に一組公認カップルという旅行だけど、そのカップルが、誰も見ていないような時でも、決して過度にいちゃついてないのが、好感が持てる[グッド(上向き矢印)]
[ひらめき]主演の定本楓馬目当てで行ったのだが、これまで、見たこともない、定本が観られて満足[かわいい]実年齢より上の、大人な部分も新たな魅力だった。このような状況下じゃなかったら、ラブシーンめいたことはあったのだろうか[exclamation&question]それも観てみたいけど[わーい(嬉しい顔)]
[ひらめき]出演者は、それぞれ好演してたけど、サビのとこで、花奈澪が全部さらう[exclamation×2]なみお、すごい[ぴかぴか(新しい)]退団してから、面白そうな舞台にいろいろ出ていて、いつか見に行こうと思っていたので、それが叶って満足。てか、これからも、目を離しちゃいけない女優だと気づいた。気づくのが遅くなってしまったが、追いかけるぞ[ひらめき]

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