「ほんとうのハウンド警部」観劇

「ほんとうのハウンド警部」


作:トム・ストッパード
翻訳:徐賀世子
演出:小川絵梨子
美術:伊藤雅子
照明:佐藤啓
音響:加藤温
衣装:髙木阿友子
ヘアメイク:佐藤裕子
舞台監督:瀬﨑将孝
プロデューサー:北村明子
提携:Bunkamura
企画・製作:シス・カンパニー


とある芝居の劇評を書くために、劇場にやってきたムーン(生田斗真)。そこで、彼のことをボロクソに言う他社のベテラン劇評家、バートブート(吉原光夫)に出くわす。辛辣な挨拶を交わす二人は、そのまま開演しても、互いに罵倒しあっている。バートブートがここに来たのは、推しの女優を観るため、らしい。ムーンは、また新しい愛人を送り込んだな…と悪態をついている。バートブートは、ムーンのことを、しょせん2番手の劇評家、いつまでたってもトップになれない、とくさす。
(舞台上に、演劇空間と、客席が設えられていて、ムーンたちは、舞台上の客席に座っている。ほかに客はいないが、いる体なのか、実際初日(劇評家が来るのは初日)から売れていない公演なのかは不明。)
舞台では、最初から一人の男(手塚祐介)が死んでいるが、ソファの下なので、なかなか気づかれない。その舞台に次々現れるクセの強い面々(峯村リエ・池谷のぶえ・山崎一・鈴木浩介・趣里)。みんな、それぞれ秘密があったりする。さらに、凶悪犯がこの近辺に逃げ込んだ恐れがある…というニュースがたびたびラジオから聞こえてくる。
この劇中劇、どうやら、とてもつまらない芝居…というか、失敗作らしい。劇中の劇評家たちの発言によれば。
しかし…クセの強い面々の演じる、クセの強い人々が、普通に面白くて、わりと引き込まれてしまった。この程度の不条理劇なら、普通にありがちなので、続きが観たかったくらい(笑)
峯村趣里のキャットファイト、峯村池谷のわざとらしい、裏のありそうなやり取り、こんな状況なのに、飄々と表情の変わらない鈴木、存在が不条理になっている山崎…3時間超の大河ドラマでもいけるわ、このメンツ[ハートたち(複数ハート)][ハートたち(複数ハート)][ハートたち(複数ハート)]
てか、峯村が超モテモテとか、そういう世界観もステキじゃない[exclamation&question]
ムーンとバートブートは、日本の、一筋縄ではいかない名優たちのこと、知らなかったのかな。この方たちって、もちろん、初見でも「おっ[exclamation]」とは思うんだけど、続けて観ているうちに、もはや、食堂のメニューを読んでても、「ずっと聞いていたい」域に達するので(サラ・ベルナールか)、そこまで行くと、「役者、揃えやがって…」くらいしか悪態つけないと思うんだよね。
まあ、知らなかったということで、1幕終了後の休憩時間に、怒った二人は、空になった舞台にまで足を踏み入れてバトルを繰り広げるが、そこで突然、演劇が再開し、二人は劇中劇の登場人物として扱われることになる。さっきまで、さんざん悪口を言っていた舞台に出演する。続きも知らないのに…。
さらに、さっきから死んでいる男が、ムーンの社のトップ劇評家、ヒッグスであることが判明する。うわ、究極の不条理[exclamation×2]
ここからの展開は、驚きの連続で、気がついたら、幕が下りていた。短いよ[あせあせ(飛び散る汗)](劇中劇は休憩時間があるが、本編はノンストップ75分なのだ[exclamation]
今回、この記事を書くにあたり、一応、「ヒッグスである」以降の経緯をネットで確認したのだが、あまりの展開に、これは、永遠に観た人だけの秘密にしておくべきなのだろう、と思った。たしかに、そんな話だった気がするが、気のせいかもしれない、あまりにも…な展開だった[もうやだ~(悲しい顔)]


「人を食った芝居」というのが、一番、ピッタリ来る言葉だが、とにかく、衝撃的な作品。エンゲキって、やっぱ、面白いな、と、思える時間だった。忘れた頃にまた観てみたい。
皆さん、素晴らしいお芝居だったが、75分間、ずっと死に続けていた手塚さん、本当にお疲れ様でした[exclamation×2]

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