「マリー・アントワネット」観劇

ミュージカル
「マリー・アントワネット」


脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出:ロバート・ヨハンソン
(遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」より )


翻訳・訳詞:竜 真知子
音楽監督:甲斐正人
振付:ジェイミー・マクダニエル
演出補:末永陽一
歌唱指導:林 アキラ、やまぐちあきこ
美術コンセプト:Robert Johanson、Michael Schweikardt
美術:松井るみ
照明:高見和義
音響:山本浩一
衣裳:生澤美子
ヘアメイク:野澤幸雄(スタジオAD)
映像:奥 秀太郎
振付助手:青山航士
指揮:塩田明弘
オーケストラ:東宝ミュージック、ダット・ミュージック
音楽監督助手:宇賀神典子
稽古ピアノ:國井雅美、中條純子、石川花蓮
舞台監督:廣田 進
制作助手:廣木由美、土器屋利行
プロダクション・コーディネーター:小熊節子
プロデューサー:岡本義次、田中利尚
宣伝美術:服部浩臣
宣伝写真:平岩 享、田内峻平
ウィッグ製作協力:アデランス
製作:東宝


知人のお誘いで観劇。前回公演も観ていたので、今回はパスするところだったが、おかげであらためて、このミュージカルをかみしめることができた。
前回の観劇から、2年と少し。出演者は、そんなに変わっていない…と思う。(うろ覚え…)
フェルセン伯爵役は、Wキャストの一人が古川雄大⇒甲斐翔真となっている。ゆんは、「モーツァルト!」の稽古とかぶる…ということなのだろう。


Wキャストのうち、私が観劇したキャストは下記の通り。
マリー・アントワネット…笹本玲奈
マルグリット・アルノー…ソニン
フェルセン伯爵…甲斐翔真
オルレアン公…小野田龍之介
エベール…川口竜也


革命の数年前から物語は始まる。マリー・アントワネット(花總まり/笹本玲奈)やフェルセン伯爵(田代万里生/甲斐翔真)も姿を見せるオルレアン公(上原理生/小野田龍之介)の夜会。そこに、一人の汚い身なりの平民の娘、マルグリット・アルノー(ソニン/昆夏美)が乱入してくる。彼女の激しい怒りの理由を、アントワネットは理解できない。慈悲を示してやろうとして、逆ギレされる。(結局、パンを大量に持っていかれる。)
一方、ロアン大司教(中山昇)に対しては、徹底的に冷淡なアントワネット。
第1幕は、首飾り事件の顛末を中心に、王妃が憎まれていく過程が描かれる。
ロアン大司教と、ラ・モット夫人(家塚敦子)を巻き込んで、オルレアン公やエベール(上山竜治/川口竜也)が民衆を煽る。マルグリットも、女たちのリーダー的な存在として、エベールらに利用されるが、この時のちょっとした機転が、第2幕で生きる。
第2幕は、革命から悲劇の目白押し…そんな中、アントワネット付の侍女になって彼女を監視しているマルグリットは、自分の知っている子守唄をアントワネットが歌っていることから、自分の出自に気づく。彼女の父親は、アントワネットの父である神聖ローマ皇帝フランツ1世だったのだ。
(私は、子供の頃、テレビアニメ「ラ・セーヌの星」を見て、アントワネットの妹がフランス人のはずがない[exclamation]と、ひどく腹を立てた思い出があるが、フランスとオーストリアは地続きなので、生まれた地方によっては、そういうこともあり得るのか…と、今頃腹に落ちた。)
国王の死後、王妃の裁判の中で、マルグリットは、かつてオルレアン公がエベールのために書いた一筆を利用して、彼らに一矢報いることに成功するなど、ちょっとだけ溜飲を下げる場面もあるものの、アントワネットは処刑され、悲劇は完成する。
そんな中、前半は、アントワネットに取り入り、栄耀栄華、後半は、いい感じに亡命していく、レオナール(駒田一)とローズ・ベルタン(彩吹真央)は、この時代を軽やかに駆け抜けていく。“レミゼ”におけるテナルディエ夫妻みたいなところがある役だな…と思う。現実は、因果応報というものではなく、ずる賢い人々が、うまく世間を渡り歩いていく。


プロローグは、アントワネットの死を知らされたフェルセン伯爵の独白からのソロなのだが、甲斐の歌には、ほとんどドラマを感じることがなく、え…ここ、歌えばいい場面じゃないよね[exclamation&question]と思ったのだが、それは、マリー・アントワネットの人生を知りすぎているベルばら世代だからこその感想だろうか。
それとも、プロローグなので、あえて抑え目にしたのかな。
アントワネット処刑の報に接したフェルセン伯爵の歌なので、深い悲しみと後悔に満ちた歌になるはずだし、2年前の田代や古川からはそれを十分感じたのだが…。なんだか、気になる場面だった。


知りすぎている話だからこそ、途中からどんどんつらくなる。アントワネットを最後まで見捨てないランバル公爵夫人(彩乃かなみ)の最期とか…まじ、つらすぎる…[もうやだ~(悲しい顔)]
そんな中、「市民の女たちがみんなバカ」みたいな演出は、やだな~、と感じた。パリからベルサイユへ女たちの行軍(ベルサイユ行進)、という場面は、本作でも取り上げられているが、それも男性の発案ということになっていたり、女たちは毎日生きていくのに必死で政治的なことは考えない風だったり。
革命期に活躍した有名な女性も多いというのに、そして、フランス革命好きな女性が多いというのに、男性がすべてを支配し、女性は何も考えていない設定は、微妙に腹が立つ。それゆえに、マルグリットの聡明さが際立つという風にしたいのかもしれないが、彼女の出自(実はフランツ1世の娘)を考えると、庶民の女は人間じゃない…[爆弾]とも受け取れる。
「人権宣言」以降、フランスで女性の権利が認められない時代が長く続いたことは事実だが、革命初期は、そんなことはなかったはず。その辺が、残念。


笹本玲奈のアントワネットは、2年前の庶民派な雰囲気から、女王の貫録が出た…というか、やっぱり、ワッカのドレスって、馴染むと強いよね、と思う。妻として、母として、恋する女として…そしてなにより女王として、美しく、気高く、素敵でした[黒ハート]
ソニンのマルグリットは、まさに革命の申し子[exclamation×2]という感じなのだが、そろぞろ卒業(違うステージに向かう時期)かな。あまり色がついてもね…。マルグリットがアントワネットに向ける複雑な感情、オルレアン公やエベールに向ける辛辣な言葉、小さな体からシアターオーブ全体を揺るがす熱い歌声、やっぱり、ソニンはすごい[ぴかぴか(新しい)]
原田優一演じるルイ16世が、人として本当に素晴らしい…んだけど、国王としては、難局を乗り切れるタイプではなかったんだなーというのが、本当に気の毒で…。もし平時だったら、その人徳で、フランス全土から尊敬される国王になったと思うのだけど…[バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)][バッド(下向き矢印)]なーんてことまで、考えさせる深い国王様でした。

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