兵庫県立芸術文化センタープロデュース
「sound theater X-I」
出演 TSUKEMEN
ゲスト 大空ゆうひ
神戸少年少女合唱団
朝倉由実、原ひゐ奈、水野愛唯、安東玲花、下園三花、遠山姫菜、木梨愛理、井上初音、西本尚弥、大西叶怜、熊谷壮真、福島実玲、原布々美、内藤珠乃、東侑和、橋本涼葉、山中千惺、西本春香、秋山沙穂、秋山詩穂、三浦凌、熊谷碧莉
照明:倉本泰史
音響:讃岐浩司
美術:関谷潔司
舞台監督:篠崎彰宏
舞台統括:金子彰宏
照明部:相馬寛之
舞台技術部:竹内暢
大空ゆうひ歌唱曲編曲:萩森英明
大空ゆうひ衣装:ゴウダアツコ
ヘアスタイリング:杉山美智恵
プロデュース・制作:栗原喜美子
協力:小畑マユミ(神戸少年少女合唱団)、株式会社エニー、エイベックスマネジメント株式会社、株式会社ひょうごT2
企画制作:兵庫県立芸術文化センター
製作・主催:兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
6月に実施されるはずだった「sound theater X」が新型ウィルスの影響で中止になり、そのリベンジ公演的な位置づけの公演として、Xと同じメンバーでの実施となった。
ローマ数字で10はX、11はXIと記載するが、この公演は、「X-I」と書かれている。これは、Xの´(ダッシュ)という意味なのかな…と、思ってしまったが、次回公演(「冷蔵庫のうえの人生」でお世話になったレ・フレールさんが出演される)のチラシによると、次も「X-II」なので、このまま、「‐」を付けて続けていくようです。
ステージ上の左右に上がり段があり、センターにはグランドピアノ。
ホリゾントの前に、ドレープした白布がきれいに掛かっていて、これに照明が当たって、色々な表情が生まれる。TSUKEMENの三人だけの演奏の時も、音楽の進行に合わせて、照明がくるくる変わって美しい。
ゆうひさんが登場するまでに、TSUKEMENの演奏で、まず、3曲。
最初の曲は、ベートーベンの交響曲を4分間に纏めた「DANCE!ベートーヴェン・シンフォニー」。
いきなり雷の音から始まり、「運命」でスタートする。“DANCE!”と銘打っているだけあって、このナンバーだけ、パーカッションの打ち込みでリズムが刻まれている。その分、ちょっと音色が違うナンバーだが、来年、ベートーベンで盛り上がるはずの宝塚ファンには、よい予習となる1曲だった。
左右の上り段のところ、下手にTAIRIKさん、上手にKENTAさんでスタート。ソーシャルディスタンスを取っているのかと思ったが、二人は、演奏しながら動き回るので、そういうことでもないらしい。
続いて、オリジナルのナンバー、「Dear Doctor」。これは、新型ウィルスの最前線で頑張っている医療関係者に捧げられたナンバーとのこと。この曲を作曲したTAIRIKさんは、ヴァイオリンとヴィオラの両方を演奏できるようで、曲によって使い分けをしていた。
そして、「トルコ天国地獄行進曲」。モーツァルトの「トルコ行進曲」が、大胆にアレンジされ、再構成されたなぁ~と思っていたら、途中から、「天国と地獄」へ。これはもう、のだめの「ペトリューシュカ」からの3分クッキング並みの面白さ
次の「ラ・ラ・カノン」は、花組公演でおなじみ「パッヘルベルのカノン」が途中から、映画「ラ・ラ・ランド」の「Another Day of Sun」(冒頭の渋滞で踊りだしちゃう曲ね)になっちゃって、メンバーが足踏み鳴らして演奏するのがかっこいい
と、すっかり劇場が温まったところで、ゆうひさんが登場した。
ゆうひさんは、ブルーグリーンのワンピース姿。外はねの肩位の長さの鬘(日曜は地毛だったかも…)に白っぽい付け毛を左の頬脇に付けて、垂れ下がるゴールドのピアスが可愛い
そうして選んだ曲は、「フレディもしくは三教街ーロシア租界にてー」。これ、メンバーのTAIRIKさんのお父様、さだまさしさんの楽曲。私は、全然この曲を知らなかったのだけど、ドラマチックで、ゆうひさんの歌声にとても似合っていた。
世界観としては、「紅の豚」に出てくる「さくらんぼの実る頃」の映像みたいな感じかな。
ごく普通に結婚して幸せな人生を送るはずだった若いカップルの男性の方が戦争のせいで死んでしまって、そのことを回顧する女性の歌だった。戦争はいけないと声高に叫ぶのではなく、ただ、あの頃はこうだった、そして、今あなたはいない、という事実を歌う。本当は、素敵なおじいさんになっているはずだったのにーと。
ピアノとヴァイオリンだけの伴奏で、ゆうひさんは、マイクに向けて囁くように歌ったり、感情を開放するように歌い上げたりーと、ドラマチックに世界観を表現していた。
これまでのライブの中で、一番、感動的だった。
ゆうひさんのツイッターによれば、リハーサルを数日間やったそうで、その辺の準備の周到さが、今回の歌唱につながったのかな~と思った。プロのシンガーなら、1回のリハで完璧にこなすんだろうけど、ゆうひさんは、繊細なので、今後は、入念なリハーサルを希望します
ここでゆうひさんを交えてのMCがあり、選曲はゆうひさんが行ったことなどが語られる。
どうやら、自粛期間にギターの練習をしていたゆうひさん、その目的は、この曲を弾き語りすることだったそうで、ってことは、この先、弾き語りの「フレディ…」を私たちは期待できるってことですよね
楽しみにしています
一度、ゆうひさんが下がって、今度は「新世界」。
こちらは、雪組公演でガッツリ使われたことがありましたね~。
一楽章の印象的なテーマ部分と、有名な二楽章の「遠き山に日は落ちて」部分が、入り混じって独特の音楽になっている。
続いて、オリジナル曲の「5 Red Chateau」。すごく切なくて美しいメロディーの曲
で、再びゆうひさんが登場。
これまでも何度か歌っている「The Rose(愛は花、君はその種子)」を高畑勲の訳詞で歌ってくれた。
ヴァイオリンのKENTAさんが、日本語歌詞が珍しいという話を振ってくれたが、ゆうひさんは、歌詞を届けたいということで、日本語詞を使ったことと、この歌詞が特に自分に「刺さる」ものだったので、この歌詞にした…みたいなことを話してくれた。
そして、もう一曲、森山直太朗の「愛し君へ」を。
今回は、初めて聴く曲が2曲もあったが、どれも、すごく心が震える素敵なナンバーだったし、ピアノとヴァイオリン(orヴィオラ)という編成に似合っていて、ゆうひさんの選曲、素敵だな~と思えた。
ここから、神戸少年少女合唱団のメンバーを加えての合唱曲「時を超える絆」にも、ゆうひさんは参加。冒頭のソロパートと合唱のすべてを歌ってくれた。
冒頭のソロパートは、特に2日目、いわゆる合唱の発声になっていて、ああ、ゆうひさんもカゲコやってたことあったよな~なんて思い出してみたり。(「エリザベート」では1幕出てこないので、ほぼカゲコ皆勤賞な感じだったそうで
)
もし、生まれる時が百年ずれていたら、決して会えなかった私たち人間の、奇跡のような絆について美しいハーモニーを聴くことができた。合唱団の面々はマウスシールドを付け、彼らの前には、合唱の間、アクリル板が下りてくるという徹底ぶりで、ちょっとかわいそうな感じがしたが、上演されたことをまず喜ぶべきなんだろうな。
ここでゆうひさんの出番もおしまい。
続いては、最後のナンバー、オリジナル曲の「AKATSUKI」。テクニカルなナンバーで、かっこよかったです
会場は大盛り上がりで、すぐにアンコールがかかり、アンコール曲は、「スペイン」。
これって、私はギター演奏でよく聴くのだけど、ヴァイオリン用の演奏も多いのかな
ブリッジのところで、客電が点灯し、観客が手拍子をするのは、TSUKEMENさんのお約束なのかな。そして、個々の超絶テクのところで拍手が起きるというのも、クラシックでは珍しい場面だが、即反応があったので、たぶん、こちらもお約束なんだろうと思う。
なかなか楽しい舞台だったので、CDなどに手を出してみようかななんて思う。
その昔、「シャングリラ」の音楽に使われたことで興味を持ったピアノジャック(→Pia‐no‐jaC←)さんの、クラシック音楽をアレンジしたCDも楽しかったので、たぶん気に入るんじゃないかな。
終了後、ダブル、トリプルのカーテンコールもあり、ゆうひさんも登場。とても嬉しそうだった。
これで、ゆうひさんの生の舞台を観るのは今年最後。9月の終わりに始まって、11月頭に終わるっていう、ほぼ1ヶ月の舞台活動だったけど、全部、ちゃんと行われてよかった
来年は、1年を通じてゆうひさんを追いかけられますように、と祈るばかりです。
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