「サブマリン」観劇

東京ハートブレイカーズ
「サブマリン」


原作:伊坂幸太郎「サブマリン」(講談社文芸ピース刊)
脚本・演出:益山貴司


楽曲提供:西山宏幸
演出助手:田原寛也
衣装協力:実川貴美子
映像記録:庄村拓也
写真:安東愛有子
宣伝美術:ムロオカ
制作協力:仲村和生
主催:(株)ナッポスユナイテッド
Special Thanks:(公財)アイメイト協会
企画・製作:首藤健祐


私が観劇した夜、吉祥寺の駅に降り立ったら、ものすごい豪雨。
そこから劇場となるライブハウスに着くまでの間の水攻めはひどいもので、自分がサブマリンになって水中を歩いているような気分になった。


さて、今回の劇場は、ライブハウス。
ライブハウスの場合、ワンドリンク注文が必須ということが多く、私はジントニックかなんか頼んでみました。あんまり観劇前にお酒を飲むことは多くないんですが。ちょっとアウェー感があったので、お酒でいい感じにほぐれてよかったかな。


原作は伊坂幸太郎。
以前も、今回のお目当て、多田直人が出演した「アヒルと鴨とコインロッカー」が伊坂氏の作品だった。
その時も思ったのだが、伊坂氏の作品、結局、原作通りに進めるのが一番面白いという結論になるんだろうなー。小説なのに、立体的に完成してしまっているというか。そして、エンターテイメントとして、とても面白い。だから、舞台化もされるということなのだろう。
で、今回の「サブマリン」、伊坂氏の短編「チルドレン」の続編的な物語になっていて、家庭裁判所の破天荒な調査員、陣内(首藤健祐)が大活躍する。もちろん関係する事件などは、独立しているので、「チルドレン」を知らない私などでもついて行けるのだが、「チルドレン」の中の登場人物(本作には登場しない)について、曖昧にされている部分が、舞台上でも曖昧にされた形で登場するので、「あれ、なんか聞き逃した伏線が?」と思ってしまった。 あれは、切れなかったのかな[むかっ(怒り)] (あれのおかげで、「チルドレン」という作品に興味を持った、ということはありつつも。)


少年犯罪は、基本的に、家庭裁判所で事実だけでなく家庭環境なども詳しく調査し、裁判官が主導する裁判において量刑が決められる。あくまでも更生が目的であり、処罰に重きを置いていない。なので、家庭裁判所の調査員は、対象となる少年に対して、検察官のような姿勢ではなく、保護司のような姿勢で臨んでいて、裁判において保護観察処分となった少年のもとにも定期的に訪れたりしている。
今回登場する「裁判案件」は、棚岡佑真(白又敦)という少年が無免許運転で男性を死なせてしまった、という事件。佑真は逮捕後に事件を起こしたと認めており、事実認定を争う話ではない。家裁送致後、それ以上の供述を拒む少年に疑問を抱き、彼が事件を起こした本当の理由を調べようと、陣内や部下の武藤(岡田達也)が奮闘する、というのが基本のストーリーだ。
で、主演は、この佑真役の白又ということになっている。
なんだけど、彼は黙秘している。黙秘してるから、出てきても台詞がない。
しかも、陣内さんはおせっかいなので、勝手に事件を調べまくり、その過程が芝居になっているので、出演シーンも多くない。
あ、久々、佑真登場[あせあせ(飛び散る汗)]という感じ。
さらに、佑真の小学校時代の友人、田村守(末原拓馬)が登場し、「本当の動機」をめぐるエピソードで場をさらう。まあ、さらって当然の役者なのだけど。
その上、その「本当の動機」である、彼らの友人の命を奪った事故を起こした元少年・若林(多田直人)のエピソードが入る。これがまた場をさらう。まあさらって当然ではある。
これだけでもひどいところにもってきて、話をややこしくするためのダミーの事件と犯人がいて、そこでも、陣内の友人、盲導犬を連れた男・永瀬(井俣太良)が場をさらう。これまたさらって当然だよね。
で、推理小説あるある、の、解決のヒントをさらっと教えてくれるキャラクターがいて、それは、現在保護観察中の、ネット掲示板で脅迫事件を起こした少年、小山田俊(岩義人)なのだが、これがまたおいしいのなんのって。
そういうわけで、入口にたくさんの花輪を出してもらっていた主演俳優さんが、まったくかすんでしまったように見える舞台だった。
それでも成立していたから、観客としては、まったく気にならない、というか、自分の中では、甚内と武藤のコンビが主役だと思っているので、全然いいんだけど、白又くん本人的に、これで主演とか、いいんだろうか、と逆に心配になった。
(事務所間の政治的なあれこれで、名目上の主演がほしかった、とかなら、これ以上言わないけどね。)
最後に、なぜかライブがついていて、多田さんのギターなんかも聴けて、非常にお得な公演でした。
雨の吉祥寺19:30開演はキツかったけど、観て良かった[exclamation×2]
ちなみにここでも一番目立っていたのは、小山田少年でした。 目立ったもん勝ちってことですかね[爆弾]


原作小説も気になったが、文庫になっていなかったので、しばらく様子見かな。

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