ミュージカル「I LOVE A PIANO」観劇

「I LOVE A PIANO」 -THE MUSICAL-


Music and Lyrics by IRVING BERLIN


Conceiced by RAY RODERICK and MICHAEL BERKELEY
Musical Arrangements by Michael Berkeley
World Premiere Production Produced by Tri-Arts,Sharon,CT


上演台本・訳詞・演出:小林香
音楽監督:大貫祐一郎
振付:木下菜津子


美術:土岐研一
照明:奥野友康
音響:山本浩一
衣裳:四方修平
ヘアメイク:川端富生
歌唱指導:大嶋吾郎
タップ振付:本間憲一
演出助手:落石明憲
振付助手:権藤あかね
稽古ピアノ:伊藤祥子
舞台関東:田中力也


アーヴィング・バーリンの楽曲を用いたジュークボックス・ミュージカル。
ユダヤ系ロシア人の青年、レオンがティンパン通りの楽器店に就職し、別離や戦争を経て、大作曲家になるまでを描いている。
出演者は、ピアニストを除いて男性三名、女性三名。この三人の男性キャスト(屋良朝幸・上口耕平・鈴木壮麻)が、それぞれの年代のレオンを演じる。 そして、おそらく日本版だけのキャラクターとして、その恋人役を三人の女性キャスト(小此木まり・吉沢梨絵・樹里咲穂)が演じている。ラブラブの恋人として、離れ離れの人生を送りながらふと思い出す相手として、そして、孫がいる年になっての再会シーンとして。 そこにひとつの仕掛けがあって、レオンは、この楽器店にあったピアノにほれ込んでいる。楽器店で働きたいと思ったのも、そのピアノがあったから。そして、彼は、恋人に贈る楽曲を、このピアノの中に仕込んでいた。それが40年ぶりに発見されるシーンが、ドラマのクライマックス…かな。ピアノが重要な小道具になっているから、数あるバーリンのヒット曲の中から、「I LOVE A PIANO」をミュージカルのタイトルとしたのだろう。
実際は、60曲に及ぶミュージカルナンバーを整理し、日本版の脚本も担当したのは、小林香。その昔「イフアイifi」という舞台で、この人の世界観と私は相いれないと思った記憶がある。たぶん、そういう世界観的な違和感が、最後まで気になってしまった作品だった。今回も。


レオンが作曲し、ピアノの中に封印した曲―それは後にレオン自身が演奏して、元恋人のサディーに聴かせるのだが―誰もが知る「ホワイト・クリスマス」だった。それが、1970年代にピアノから掘り起こされ、初老となった恋人に捧げられる。ここで、私は、めちゃくちゃ戸惑った。
「ホワイト・クリスマス」は、事実として1930年代に、世界的ヒット曲になっている。作曲者名もよく知られている。アーヴィング・バーリンだ。
ドラマはいきなり、アーヴィング・バーリンがいなくて(レオンが作曲したということは、アーヴィング・バーリンは存在しないということだ)、「ホワイト・クリスマス」が封印された(1930年~1970年代まで一度も演奏されることなく、ピアノの中に楽譜のメモがしまわれていた)パラレル・ワールドの物語にチェンジしてしまった[exclamation]
 「イフアイ」はともかく、この作品は、SF仕立てにするのは間違ってるぞ…[爆弾]


日本版を製作するに当たり、楽曲の整理や、ヒロインを登場させるなどの改変を加えた、と上演台本・訳詞・演出の小林氏はプログラムで語っている。
その程度の自由度のある上演契約だったのだろうが、アーヴング・バーリンのジュークボックス・ミュージカルに、まったく関係ない新曲を追加する自由はさすがにないだろうし、あったとしてもそれを作曲する勇気のある作曲家もいないだろう。
だからといって、日本ではおそらくアーヴィング・バーリンと言って一番に思い浮かぶ曲を、「なかった」ことにするとは…[爆弾]
また、今、ここにあるピアノが、かつてレオンが愛し、それゆえに手放した「あのピアノ」である証拠として、一番高いキーを押下しても音が出ない=40年前に封印した楽譜メモが挟まっているというのは、ドラマチックではあるが、40年間一度も調律してなかったのかよ[exclamation&question]みたいなことも含めて、もはや、突っ込む気力も起きない。 (つか、むしろ、日の目を観る前に、関係者で突っ込んでくれ[ちっ(怒った顔)]
いったい、どこまでが、オリジナルで、どこからが日本版の改変部分かは知らないが、どちらの責任であっても、この辺の設定はお粗末極まりない。
また、小林氏は、アーヴィング・バーリンの名は、日本ではコール・ポーターほど有名ではないとプログラムで語っているが、それは、ちょっと納得できない。少なくとも、私はバーリンの名を先に知ったし。
それでも、え、この曲もバーリンの作曲だったか[exclamation]と驚きながら見ることとなった。天才か[exclamation×2]なので、あまり、侮らないでね[ちっ(怒った顔)]


とはいえ、ストーリー部分を別にすれば、(おっと大胆な発言[あせあせ(飛び散る汗)])ミュージカル作品として、実に楽しい。それは、


[1]音楽が素晴らしいから


[2]出演者が素晴らしいから


にほかならない。てか、この出演者陣、神ですよっ[黒ハート]


そして、全員が主役、全員がスター。優劣などない。


なのですが…それじゃ味気ないので、印象に残ったナンバーを。樹里咲穂の歌った「ブルー・スカイ」から「ゴッド・ブレス・アメリカ」は、鳥肌ものでした。
先ほどは、演出家をあれこれこき下ろしたけど、この「ゴッド・ブレス…」で、一度もタイトルを歌詞に盛り込まなかった(原曲には当然ある)見識は素晴らしいと思った。日本で、あの歌詞は、あの場面では鼻白むよね。

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