「言葉の奥ゆき」(1)

Studio Life ≪Jun企画≫
言葉の奥ゆき―KOTOBA NO OKUYUKI-


演出:倉田淳
美術・舞台監督:倉本徹
照明:倉本徹
演出助手・音響:宮本紗也加
音楽協力:竹下亮


スタジオライフが、初めての企画、“朗読”ステージをやり、及川健も出演する…ということで、もちろん[黒ハート]行って来ました。


My初日は、4月22日。16時公演と、19時からのトークライブを見てきました[るんるん]


まず、16時公演。
≪Jun企画≫の企画者、倉田淳氏から、企画意図や作品紹介があった後、朗読者が呼ばれ、椅子に座って朗読を行う。
この企画のために、倉本徹氏が張り切って作ったセット。それだけでドラマが生まれそうなセット。客席も板張りの上にパイプ椅子…と、いつもとは様子が違う。この板張りの板は、「ファントム」の時の舞台上に敷かれていたものだそうだ。
たしかにバミリがしてある…[わーい(嬉しい顔)]
そして、この日は、かつてファントムの母・マドレーヌを演じた二人の女優が、朗読者として登場することになっていた。


関戸博一「皮膚と心」(太宰治)
及川健「日の出前」(太宰治)


関戸の「皮膚と心」は、女性の一人称で描かれた小説。
彼女は、あまり容姿に恵まれていなかったらしく、そのせいで行き遅れになりそうなところを、バツイチの男性と縁があって見合い結婚をした。夫は優しく、某化粧品会社のトレードマークのデザインをしたくらい有名な、今で言うところのグラフィックデザイナー。
ある日、肌に小さな吹き出物が出来、そこをこすったりしたために、全身に広がって大変なことになってしまった主人公が、医者にかかるまでの心の動きを書いている。
どこまでも限りなく広がる妄想を丁寧に描いているのが面白かった。
関戸は、やわらない語り口で、この夫婦の日々の生活を余すところなく表現していた。語り手の女性の、夫の前に裸身をさらして吹き出物を見てもらうことに恥じらいより安心感を感じているところや、再婚である夫が自分以外の女性を知っていることへのやり場のない嫉妬など、なんだかもう、聴いていて「御馳走様」的甘ったるさを感じさせる小説だが、そんな純情な新妻の雰囲気がよく出ていたと思う。


及川の「日の出前」は、戦時中に起きた、とある殺人事件に至るまでの、とある一家の物語を丹念に描いた小説。こちらは三人称で、どこかルポルタージュ風でもある。
及川は、父親・母親・兄・妹の一家だけでなく、女中・兄の友人たちなど10人ほどの人物を演じ分け、一家の崩壊していくさまを、悲惨な形でなく、エンターテイメントとして聞かせた。最後の、妹・節子の一言は、女優・及川らしい圧巻のセリフ回しだった。
兄・勝治も実に生き生きと造形していたが、こういう役(長身で乱暴者)は、朗読だからこそ及川に回るんだよなぁ~と、この企画に感謝した。


関戸が40分弱、及川が40分超という、長い朗読だったが、飽きさせず、楽しく見せてくれたのは、さすがだと思った。


その後、若手メンバーによる詩が披露された。この日は、澤井俊輝鈴木翔音の二人が登場した。
若手たちは、マイクの前に立って、短い詩を読む。その短さがまた鮮烈でよかった。


トークライブの模様は、また別記事で。

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