落語の会、一度間があいてしまったのですが、またまたお誘いをいただき、行ってきました。
「第八回 古今亭文菊 SHINGO十番勝負」
古今亭文菊師匠(本名が“しんご”とのこと)が、大先輩の胸を借りて十番の落語会をやる…という会の八回目。(その昔、「新吾十番勝負」という時代劇があり、それにかけたタイトルだそうです。)
今回のゲストは、入船亭扇遊師匠。
基本的に前座の方が一席、文菊師匠が一席、ゲストが一席、5分の休憩をはさみ、文菊師匠がもう一席、でお開きとなる構成。
まず、前座の柳家小多け(こたけ)さんが、「出来心」という落語を聴かせてくれた。
いまいちイケてない泥棒さんが、師匠の指導のもと、空巣に入ろうとするが、どうも才能がないらしい。留守宅にあがりこんで、タバコと羊羹を勝手にごちそうになるが、家人が2階にいたことがわかり、命からがら逃げだして…それでもタバコと羊羹分儲けたからいいか…と思ったら、下駄を置いて来てしまった、というサゲ。
この「出来心」という噺は、同じタイトルで出だしも一緒で、途中から2つのストーリーがあるようですね。もう一つの「出来心」も聞いてみたいな…と思いました。
小多けさんは、大学の落研出身のようですね。
続いて、文菊師匠は、「湯屋番」。
枕でいきなり、宝塚歌劇団という言葉がでてきて、急に姿勢を正してしまいました
文菊師匠、宝塚で雪組生を相手に、落語を聴かせ、質疑応答までこなし、『幕末太陽傳』の東京初日に招待されたんだそうです。トップさんから、「ぜひダメ出ししてください」と頼まれたんだとか…。
なにやら、いきなりのオファーだったようで、どうして文菊師匠だったのかは、ご本人も首を傾げていました。昨年くらいにNHKで、小林一三の生涯を描いたドラマをやった時に、出演されていたからかなぁ~と思ってみたり。
落語には、若旦那という、遊ぶことしか考えていないキャラが登場することがよくあるが、その典型的なキャラを描いているのが、今回の湯屋番。
家からは勘当され、居候している家からも煙たがられ、仕方がないので、湯屋で働くことにした。が、やりたい仕事は、番台だけ。
その番台に乗ったものの、女湯には客が来ない。暇なので妄想している姿を男湯の客たちに笑われている…という情景を描いた噺。
いやー、もう、文菊さんの演じる色っぽい女性像が面白すぎ最初の頃は、そこにクセを感じていたが、(言葉を発せずに口だけ動かすことで色っぽさを表現するのは、あまり上品とは思えなかった)最近は、クセも個性の範囲になって、違和感を感じることがなくなった。今はもう、心の底から面白いと感じている。
続いて、本日のゲスト、入船亭扇遊師匠の「妾馬」。
人情噺って感じかな。サゲが特にあるわけではなく、八五郎というハチャメチャな男が、殿様の側室になって跡継ぎを産んだ妹の祝いに御屋敷に招かれ、様々な失敗を繰り広げながら、なぜか殿さまにも気に入られて出世することになる、という、サクセスストーリー。
年の功というか、温かみのある素敵な噺でした
休憩を挟んで、再び、文菊師匠の「子別れ」。
放蕩が過ぎて、妻子に出ていかれた大工の熊五郎。後添えにした吉原の女郎は、朝昼晩寝ているばかりで、叩き出そうとしていたら、先に男を作って出て行ってしまった。さすがに反省し、酒をやめて立ち直った熊五郎。ある日、町で一人息子の亀坊に会う。
逃げた妻が再婚もせずに女手一つで亀坊を育てていることを知る。そして、明日亀坊に鰻をごちそうしてやると言って別れる。
熊五郎は亀坊に自分のことをお母さんに話さないでくれ、と口止めするが、小遣いに渡した50銭が見つかり、誰からもらったのか、と母から問い詰められ、ゲンノウで叩くと言われた亀坊は、本当のことを話してしまう。
翌日、鰻屋で再会した元夫婦は、元の鞘に収まるが、その時「子は鎹(かすがい)だ」と聞いた亀坊が、「だからゲンノウで殴られるのか」と納得するというサゲ。
ゲンノウは、トンカチ、ナグリのことですね。鎹は、扉なんかに付いている、二つの板を繋いで開け閉めができるようにするアレですね。今は金具なことが多いですが。
文菊師匠は、夫婦と息子の三役を見事に演じ分け、芝居のような素敵な落語でした
次回は、7月とか。また行けますように。
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