演劇集団 砂地
「アトレウス」
台本・構成・演出:船岩祐太
美術:土岐研一
照明:和田東史子
音響:杉山碧
衣裳:正金彩
舞台監督:白石英輔
演出助手:山下由
美術助手:小野まりの
演出部:谷肇、菅井新菜
制作:河本三咲
フライヤーフォトグラフ:瑛大
宣伝デザイン:佐藤瑞季
主催・企画・製作:演劇集団 砂地
提携:公益財団法人武蔵野文化事業団
助成:アーツカウンシル東京(公益法人東京都歴史文化財団)
元スタジオライフの藤波瞬平くんが出ている、ということで、10年ぶりくらいに吉祥寺で下車し、初めての劇場「吉祥寺シアター」に行ってきた。
ギリシャ悲劇という以外、何も知らずに観たが、すごくよかった
「TABU」でお気に入りになった大沼百合子さんが出ているというのも嬉しい。
タイトルは「アトレウス」だが、アトレウスという登場人物は出てこない。
主な登場人物は、アガメムノン(高川裕也)の一家なのだが、そのアガメムノンの父が、“アトレウス”であり、アトレウスの一族の物語にはなっている。最初に事件に巻き込まれたのは、アガメムノンの弟、メネラオス(本多新也)。彼は、スパルタの王である。
そもそもはギリシャの神々に原因があるのだが、美の女神・アフロディーテが三人の女神の中で、誰が一番美しいかを競った時、自分を選んでくれたら、世界一の美女をプレゼントする、とか言い出したのだ。それを聞いて、審判に選ばれた羊飼いの少年パリスは、アフロディーテが一番美しい、と宣言した。その後、パリスは実はトロイアの王子であることが判明し、トロイアの王家に迎えられる。そして、彼は大使として招待されたスパルタで王妃、ヘレネの美貌に恋をした。そして、アフロディーテの助力により、パリスは、ヘレネを連れてトロイアに帰還してしまい、メンツを傷つけられたメネラオスのために、兄のアガメムノンがギリシャの戦隊を繰り出した、というところから物語は始まる。
ところが、船はアウリスの港に停泊したまま、風が起きない。
どうやら、狩猟の女神アルテミスの可愛がっていた女鹿を殺したことから、アルテミスはアガメムノンを嫌っているらしい。
神託によると、アガメムノンが娘のイピゲネイア(岩野未知)を生贄に捧げることで、風が起きるという。
アガメムノンは、妻のクリュタイメストラ(大沼百合子)に使いを出し、長女・イピゲネイアと英雄・アキレウス(藤波瞬平)の結婚が決まったと、二人を誘い出した。
最初の場面は、この長女を差し出すということに関する場面。
当然母親は本当のことを知って大騒ぎになるが、イピゲネイアは、この現実を受け入れる覚悟を決める。そして、誰もが目をそむける生贄の儀式の中、彼女は、忽然と姿を消し、そこには、血を流した女鹿が横たわっていた。
次の場面は、それから年月が経った、アガメムノンの館。
次女のエレクトラ(永宝千晶)が嘆いている。
母は、アガメムノンの従弟のアイギストス(間瀬英正)と夫婦のように、ここで暮らしている。二人の睦言は激しくて、それがエレクトラには耐えられなかった。
そこへ父、アガメムノンが10年に及ぶ戦からが凱旋する。
トロイアからカッサンドラ(天乃舞衣子)という姫を携えて。彼女は、予言が出来る。しかし、その予言を誰も信じないというアポロンの呪いにかかっている。
館に入りたくない、と泣き叫ぶ彼女(なぜならそれは死を意味していたから)の言葉を信じないアガメムノンは、無理やりカッサンドラを連れて入っていく。
次の場面で、二人は血まみれになって浴槽に沈んでいた。
クリュタイメストラは、アガメムノンを決して許していなかった。その報復が行われたのだ。
エレクトラは、母とアイギストスの新しい政治が気に入らない。
妹のクリュソテミス(小山あずさ)は、母に従っている。彼女からすると、勝ち目のない行動をするエレクトラはばかげているらしい。
彼らの行動について、コロス(小林春世・吉田久美・如月萌・工藤さや・宍泥美・石山知佳)が色々言ってのけるところが面白い。彼女たちの衣装は現代人風で、言っていることも現代っぽく、ギリシャ悲劇と我々現代人を繋いでいるような感じ。劇中の立場としては、ギリシャ市民といったところだろうか。てか、コロスにこれだけのキャストを揃えたのは、彼らの発言がポイントという意味だと思っていいよねコロスが女子だけというのも面白い趣向だと思った。
エレクトラの望みの綱は、弟のオレステス(田中壮太郎)。イピゲネイアが生贄に捧げられた時、まだ赤ん坊だった。そして、その後、家臣に預けられたため、一家とは没交渉だった。その弟が、父の死を知り、復讐のため、こっそりと帰ってくる。危険を回避するため、親友のピュラデス(藤波・二役)と謀って、自分は死んだことにして、情報を収集しようとする。
そして、アガメムノンの墓の中で、父を殺したのは、母と愛人だったことを知り、エレクトラに身分を明かし、復讐を誓う。
復讐は遂げられた。
しかし―
ここから先は、アッと驚く展開の嵐で…
正直、ちょっと混乱してよくわかっていない…
イピゲネイアが生きていたという、え…それじゃ、あの家族の殺し合いはいったい…みたいな展開から、最後は、裁判劇になる。
そこでもコロスが、女神アテネ(大沼・二役)の判決に異を唱え、「え、神様だからえらいの」とか言って混乱を呼んでいる場面は、コロスすげーってか、クレイマー最強
みたいな感じで、いやー、感動を通り越して凍り付きました
でも、ギリシャ悲劇がすごく身近に感じられ、上演時間があっという間だった。
コロスもすごかったけど、大沼さんの迫力にうっとりでした
あと、裁判劇のところで、二人の人物が同時に台詞を言う場面があって、片方のセリフしかわからないよ~と思っていたら、位置を変えてもう一度同じセリフが出てきた。すると反対側の人物のセリフがよく聞こえる。
なんか、すごいトリックみたいに思ったが、マイクの指向性なんだろうか
ちゃんとそれぞれの主張も理解できたし、でも、双方が引かずに自分の主張をしているという混乱も伝わって、よい演出だと思った。
一緒に見た友人が、「藤波くん、見た瞬間に分かった。すごい倉田さん(スタジオライフの脚本・演出家)の好きそうなタイプだね」と言っていて、ちょっと受けました
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