「一度きりの大泉の話」
少女マンガ界のレジェンド、萩尾望都による回顧録「一度きりの大泉の話」を読んだ。
一度きりの大泉の話
作者: 萩尾望都
出版社/メーカー: 河出書房新社
発売日: 2021/04/21
メディア: Kindle版
この回顧録が書かれる背景について少し。このブログをご覧になっている方で、漫画家の萩尾望都先生を知らない方は、まあほとんどいないと思うが、少女マンガを読む人なら、誰でも知っているレジェンドのような作家。こちらも誰もが知っている漫画家、竹宮惠子先生が5年ほど前に、「少年の名はジルベール」という回顧録を出版した。そこに、竹宮先生と萩尾先生が同居していた“大泉サロン”でのことが、書かれていた。少年マンガ界における伝説の“ときわ荘”のようなものが、少女マンガ界にも存在していたその名も、“大泉サロン”これを読んだマスコミ各社が、今こそ、竹宮先生、萩尾先生の対談をとか、かなり盛り上がっていたらしい。そして、それに対して、竹宮先生が「萩尾先生さえよければ…」という回答をしたらしく、萩尾先生が断っても、断っても、この手の依頼が後を絶たなかったそうだ。そこで、萩尾先生が、なぜ自分はこの手の依頼を断るしかないのか、ということを、一冊の本にしてしまったのが、本作。そこには、竹宮先生とは、20代前半に決裂してから、没交渉だということが明らかにされている。50年の没交渉…少女マンガ家としてトップを走り続けた二人が
読んでいる間、とても苦しかった。萩尾先生の痛みや苦しみ…