「推し、燃ゆ」
ずっと気になっていた「推し、燃ゆ」を読みました。
推し、燃ゆ
作者: 宇佐見りん
出版社/メーカー: 河出書房新社
発売日: 2020/09/10
メディア: Kindle版
ファン活動をしている人なら、それが表立ってのものでも、心ひそかなものでも、誰しもが経験するであろう、「別れ」のドラマ。グループなら解散、宝塚なら退団、あとは芸能界引退…という分かりやすい儀式もあるし、逮捕や死去という、まさかの別れもある。相手の結婚を機に立ち位置を変えることもあるし、推し変=こちら側の一方的な心変わりだってある。本作の語り手である「あかり」は、男女混合5人組アイドルグループ、「まざま座」の上野真幸(まさき)を応援している高校生。彼女にとって「推し」は、「作品も人もまるごと解釈し続けること」の対象だった。観て聴いて、記録し、解釈し、ブログで公開する。ネットの世界だけで交流者とやり取りをして、その世界では、はからずも、いっぱしの論客になっている。でも、素の「あかり」は、進級もおぼつかない、落ちこぼれの高校生で、作中、中退に追い込まれ、バイトもクビになり、家族から「どうするの、これから」という言葉を突き付けられ続けている。これらのことは、「観て聴いて、記録し、解釈し、ブログで公開する」推し活(ファン活動)をしている人には、ありがちのことだと思う。推しへの愛が強すぎて、現実の自分の人生の方が希薄に感じてしまう。自分もそういう傾向があるので、よくわかる。しかし、この小説は…