「人間失格 太宰治と3人の女たち」

そもそも、高校生の時に「人間失格」を読んで以来、10年近くは太宰ファンを続けていたと思う。我が家にあった全集をけっこう熟読したりして。(我が家には、いろんな作家の全集があったのだ。) まあ、それも大人になるにつれておさまるというか…卒業するというか、そんな感じになり、しばらく太宰を読んではいなかったのだが、昨年、ゆうひさんが出演した「グッド・バイ」で再び火がついた。 蜷川実花監督作品「人間失格 太宰治と3人の女たち」は、太宰と、その妻・津島未知子、愛人・太田静子、心中相手・山崎富栄の物語だ。ちょうど「グッド・バイ」で描かれていた世界だったこともあって、映画館を訪れた。…というか、「劇場版 おっさんずラブ」の後に見に行った。なんというトライストーンラインアップ(笑)いや、私の贔屓は、トライストーンといえば、矢崎広なんですけどね。 で、一番の感想は、「あの芝居は女子にやさしかったな」でした。「グッド・バイ」は、未知子も静子も富栄も…その他の女性たちも、みんな可愛かったし、理性で理解できるキャラクターだった。男性の描く、理想化された女性というのもあったのかも。「人間失格…」は、女性監督なので、女性のエゴがそこはかとなく伝わる。まあ、その分、太宰が女性と付き合うのも色恋が二の次の文豪エゴなんだけど。どんなことをしても作品を残したい…という太宰の姿が、連城三紀彦の「戻り川心中」を思い起こさせた。 この作品での太宰は、未知子を愛しながら、「斜陽」を書くために静子に恋を仕掛け、その贖罪意識から富栄にも手…

続きを読む