新派「犬神家の一族」観劇

新派百三十年 十一月新派特別公演「犬神家の一族」 原作:横溝正史(角川文庫版「犬神家の一族」)脚色・演出:齋藤雅文 美術:古川雅之照明:北内隆志音楽:甲斐正人効果:内藤博司演出助手:林野玲子舞台監督:古山昌克、大野敏之制作事務:中川亜紀制作:松本康男、本田景久、鶴岡菜野、小櫻真緒製作:松竹株式会社 新派の本公演を観るなんて、何十年ぶりだろう…とにかく、喜多村緑郎、河合雪之丞を入団させてから、少しずつ変化してきた新派という劇団が、別箱公演の「黒蜥蜴」などを通じて感じた手応えを、いよいよ本公演の板に乗せて来た…と思い、とにかく観に行かねばと、演舞場に足を運んだ。短い期間に演舞場を訪れるのも久しぶり。今回は、1階席に拘った。…ま、新派は、ちゃんと中央で芝居してくれていたけれども。 横溝正史の原作を、わりと忠実に舞台化していたが、驚いたのは、途中で犯人を明らかにしたこと。原作通りの結末なので、原作を読んだり、映像作品を見た人も多いだろう、ということで、犯人を隠さなかったのかもしれない。また、映像作品なら、探偵の推理のバックで犯行シーンを流すこともできるが、舞台では、犯行シーンをバックで演じる=影の俳優が演じることになり、(犯人は探偵の発言を聞く場所に居るため)せっかくの犯人役俳優の見せ場(殺人シーン)を奪うことにもなるし…みたいな、脚本家の葛藤もあったのかもしれない。  昭和20年代はじめ。一代にして財を成した、この地方の資産家犬神佐兵衛(いぬがみ・さへえ)は、生涯結婚しなかったが、三人の妾があ…

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