「人形の家」感想 その3
「その2」はこちらです。
ノラとクリスティーネの美しい友情だけでなく、戯曲には、控えめながら、クリスティーネとニルスの「大人の恋」も描かれている。舞台には原作には書かれていない(戯曲といっても上演台本ではないので、演出にはほとんど言及がない。だから、当然かもしれないが)キスシーンもあって、ちっとも控えめではない「大人の恋」である。(主人公夫妻にはキスシーンがないので、この舞台中、唯一のラブシーンを演じるのが、ニルスとクリスティーネということになっている。)この、ニルス(松田賢二)とクリスティーネ(大空ゆうひ)、10年前は恋人同士だった。10年前…ノラよりおねえさんのクリスティーネは、当時がちょうど結婚を考えるお年頃だったと思われる。(ゆうひさんの実年齢より若い、現在30代の役という感じ)当時、クリスティーネは、寝たきりの母親と幼い弟をかかえていた。観察力の鋭いクリスティーネは、自分に岡惚れしているニルスが、自分には尽してくれても、この三人の面倒を喜んで見てくれる人だとは思えなかったのかもしれない。そんなこんなで、家族のために、クリスティーネは、ニルスではない人と結婚することを決意した。クリスティーネに振られたニルスは、身を持ち崩して、現在では、ノラに対して手ひどい脅迫者になっていた。彼は根っからの悪人ではないが、決して善人の魂を持って生まれてきてはいない。そんなニルスの本性に気づいていて+彼の当時の境遇(まだ独り立ちはしていなくて、クリスティーネの家族を支えるには収入が足りなかった)を考えると、…