「逢いたくて…」

「逢いたくて…」 作・演出:樫田正剛原案:稲垣麻由美(「戦地で生きる支えとなった115通の手紙」扶桑社刊) 方南ぐみプロデュースの朗読公演。7月にも上演されていて、3ヶ月連続公演と書かれていたので、9月にも上演されるのだろう。この日の出演は、竹中直人・大空ゆうひ・猪野広樹の3名。猪野さんが、文句の多い兵隊・石橋、ゆうひさんが手紙の出し主・しづゑ、それ以外の役、そしてナレーションを竹中さんが担当する。それ以外の役、と書いたが、石橋の相棒となる年若い兵隊・澤田と、しづゑの夫である山田部隊長という大きな役を両方演じる。このポジションを担当する俳優次第で、全体の雰囲気が変わるんだろうな…。 終戦の年、補充人員として南方に送られた30歳の石橋と22歳の澤田。二人の日々を追いながらも、時々、挿入される、妻から夫へ宛てたと見られる手紙文。独身の男二人の物語と、その手紙は当初まったく交わらない。が、ある時、マラリアにかかった石橋が、自分の夢に出てくる女の話をする。その夢の女と、手紙が交錯する。二人は、切り込み隊に任じられ、米軍キャンプの襲撃に成功するが、そのまま戻ったら、再び切り込み隊に任命されるだけだと、脱走を決意する。もし見つかったら、道に迷ったことにしようと。そこで澤田もマラリアにかかる。しかし、澤田の夢には女は出てこなかった。そう話すと、石橋は、実は、夢に出てきた女じゃない、部隊長の手紙を失敬したのだと石橋は打ち明ける。手紙は、二人の上官、山田部隊長の妻からの手紙だったのだ。二人は道に迷いながら放浪…

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