「六月大歌舞伎」その3

「その2」はこちらです。 では、最後の演目、行きますね。 長谷川伸 作村上元三 演出「一本刀土俵入」 二幕五場  長坂元弘 美術  長倉稠 美術 この作品は、昭和6年初演なので、新歌舞伎の系譜に連なる作品のようです。なので、演出がいます。歌舞伎作品だけど、内容的には、明治以降の演劇的というか。もう普通の芝居にしか見えない。内容的にも新派みたいなお話です。 利根川沿いの宿場、取手から芝居は始まる。安孫子屋という茶屋旅籠の前、船戸の弥八(市川猿弥)が暴れているところを、旅籠の二階から眺めている酌婦のお蔦(市川猿之助)。弥八は、お蔦にも食ってかかり、通りがかった相撲取りの駒形茂兵衛(松本幸四郎)にも言いがかりをつける。そしてお蔦からは茶碗の水をかけられ、茂兵衛からは頭突きを食らわされて去って行く。その後、ふらふらしている茂兵衛にお蔦が声を掛けると、なんと腹ペコなのだという。お蔦は、手持ちの金子を与えて、立派な横綱になるようにと、声を掛ける。 その後、利根の渡しのところで、船に乗り遅れた茂兵衛は、食べ物を手にしているところを追ってきた弥八らに捕まるが、逆に川へ投げ込んだりしてしまう。その時、弥八がお蔦を「父無し子を産んだ女」と言ったため、恩あるお蔦を侮辱したと思い、さらに弥八をボコボコにしてしまう。 それから十年以上経ったある日、博徒となった茂兵衛が付近へやってくる。船頭らに安孫子屋のお蔦のことを聞くが、誰も覚えていない。お蔦は、今、飴売りをして娘を育てていた。そこへ、この辺りの大親分、儀十(…

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