「六月大歌舞伎」その2

続きです。「その1」はこちらをご覧ください。 河竹黙阿弥 作「曽我綉侠御所染」  御所五郎蔵 二幕 今回の舞台、上手側に仮花道が設えられていた。どこで使うのかな…と思ったら、この二つ目の作品でした。 京、五條坂仲之町の廓。上手仮花道に、男伊達・御所五郎蔵(片岡仁左衛門)と、その一党がずらっと並び、下手花道に、国を追放された武家の星影土右衛門(市川左團次)と、その一党がずらっと並ぶ。そうして、それぞれ割りゼリフであーだこーだとやり合う。おおー、美しいと眺めていると、衣装の模様が、「大万大吉大吉」という家紋になっている人を発見「大一大万大吉」ではないんだけど、気になる…最初のうちは、追放された武士の土右衛門と、かつて武士で今は侠客の五郎蔵が張り合っているだけに見えたが、この二人、実は深い因縁があったらしい。二人の一触即発は、廓の主人(中村歌六)によって、一度は仲裁される。五郎蔵は、武士だった頃に、主君の腰元だった皐月(中村雀右衛門)と恋仲になったが、温情によって死罪を免れ(この時代、不義=職場恋愛は死罪)、二人して京に上って、皐月が遊女となっている。とはいえ、夫がいる身…と、誰にも身を許していないので、馴染みの客はいない。そこに足しげく通っているのが、土右衛門。一方、五郎蔵の死罪を許してくれた元の主君、今は、廓通いに嵌まってしまい、皐月の朋輩、逢州(中村米吉)に入れあげ、二百両の借金を作ってしまっていた。元・主君の危機を救うべく、五郎蔵は、皐月になんとか二百両を用立ててほしいと、手紙を送る。で、…

続きを読む