「永遠の0」
永遠の0 (講談社文庫)作者: 百田 尚樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/07/15メディア: 文庫作者の百田尚樹さん、なかなか、個性的なキャラクターで、そのせいか作品もいろんなバイアスがかかって見られることが多いが、この作品は、作者のキャラクターとか、「戦争」に対する読者側の見方とか、そんなこととは別の次元で、これはもう、この小説を書くために取材された多くの人や史料が、彼の手を動かし、勝手に書かせたものだと、感じた。だって、この本を読んで、戦争は虚しいものだ、と感じない人はいないと思う。同時に、日本人のメンタリティーは、戦争向きではない、ということも、私は強く感じた。また、この小説は、先の大戦で日本軍が犯した大きな失敗を二つ挙げている。実戦経験のある明治からの本物の軍人が一線を退いた後、試験のできるエリートが軍部の中枢になってしまったこと兵の命を換えのきく部品のように使い捨てにしたことエピローグに登場するアメリカ空母の艦長は、宮部の死を悼み、艦葬を行うが、その時、これだけのパイロットが存在することを本当に脅威に思っただろうし、こんな男に特攻させる日本のクレイジーさに半ば呆れ、半ば恐怖を感じたに違いない。最近、「先の戦争で亡くなった方々の存在があればこそ、私たちの平和がある」と、したり顔で語っている政治家の方たちがいるが、彼らは、お友達の百田氏が書いたこの小説を本当に読んだことがあるのだろうかまあ、読んでないよね。神風特攻隊の人達は志願したのだから、無理やり出撃したわけじゃない、とか…